2020 Fiscal Year Research-status Report
細胞老化とオートファジーに介入する慢性腎臓病の治療法開発
Project/Area Number |
19K17745
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
岸 誠司 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (10519507)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 線維化 / DNA損傷応答 / 細胞老化 / mTOR-オートファジー共存コンパートメント |
Outline of Annual Research Achievements |
従来は腎予後良好であると考えられてきた急性腎障害が慢性腎臓病に移行することが明らかとなり、その過程においては近位尿細管上皮細胞が、ペリサイトを活性化して線維化を進展増悪させることがわかっていたが、申請者はこの分子メカニズムのさらなる解析を進め、DNA損傷応答機構および細胞老化が関与することを明らかにしている(J Clin Invest. 2019 Nov 1;129(11):4797-4816.)。 本年度は生活習慣病と高齢化がCKD患者数を増やしていることに着目し、高血圧とアテローム性動脈硬化の相互作用にこのメカニズムが生活習慣病に関連した腎臓病でも影響が認められるかの検討を進めた。 endothelial nitric oxide synthase(eNOS) +/-マウスおよび apolipoprotein E (ApoE)+/-マウスの交配で得られる8-10週齢のオスマウス、 Wild Type (WT), ApoE-/-(ApoE KO)、 eNOS-/-ApoE-/- (WKO)の血圧・脂質を確認後片側尿管結紮(UUO)を行い、day10で屠殺し、尿細管障害、線維化および腎老化を3群間で評価した。結果、ApoE KOマウスでWTマウスに比して総コレステロール値は高く、HDLコレステロール値は低値であった。WKOマウスでもコレステロール値は同様で、さらに血圧は3群の中で有意に高かった。UUO day10の腎組織ではWKOマウスで腎障害の増大と、有意な線維化の進展が明らかとなった。さらに細胞老化に関連したマーカーの発現の増加も明らかであった。以上から、高血圧症とアテローム性動脈硬化症の相互作用は腎障害への感受性を増加させ、線維化の増悪、腎の老化を促進することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の影響に伴う診療業務の拡大の影響を受けており、全体の実験量が大きく減少している。その中でもマンパワーと時間を要する遺伝子改変動物の作成が予定より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスの検体でのDNA損傷と申請者が明らかとした、腎臓の線維化の進行において近位尿細管上皮細胞において形成され、細胞老化様のフェノタイプを誘導するmTOR-オートファジー共存コンパートメント(TASCC:mTORおよびオートリソソームの集積する境界の明瞭な細胞内領域, Sci Transl Med. 2019 Jan 23;11(476):eaav4754.)の評価を進め、ヒトの腎臓検体でも細胞老化やDNA障害の程度の評価を進める。
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Causes of Carryover |
すでに購入済みの試薬や抗体を使用して、すでに採取したサンプルの解析で研究が可能であったこと、COVID-19の対応のために診療業務の時間が拡大したことが挙げられる。次年度の使用額は、遺伝子改変動物の作成維持及びその解析さらにはヒト検体の解析などに使用する予定である。
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Research Products
(8 results)