2020 Fiscal Year Research-status Report
アロステリックPHD阻害による選択的HIF活性化:新規慢性腎疾患治療薬の開発
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19K17746
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
川口 真一 佐賀大学, 農学部, 准教授 (00722894)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | HIF活性化 / PHD阻害薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究では、虚血症状を統一的に改善できる分子標的HIF(低酸素誘導因子)に注目して、経口虚血治療薬の開発を進めてきた。HIFを分解に導くタンパク質であるPHDを阻害することでHIFを活性化させ、虚血症状を統一的に改善することが可能となる。今までにPHDを阻害する低分子化合物である化合物Aを見出し、その効率的な合成法を昨年度までに見い出してきた。今年度は、合成面では化合物Aの薬物動態パラメータの改善を試みた。すなわち、従来の化合物Aでは水溶性が高く、細胞内への吸収が弱いと考えられたので、脂溶性を向上した化合物Aの誘導体を6化合物合成した。その結果、HIF誘導活性が著しく向上した。引き続き薬物動態パラメータの改善を試み、誘導体を合成していく。 化合物のHIFの活性化の機構に関しても不明点があった。すなわち、従来までのPHD阻害の作用点と予想しているがその作用点が明らかではなかった。今回、導入したドッキングシュミレーションソフトを利用し、PHD阻害の作用点を計算した結果、従来のPHDと異なる作用点が予想された。この作用点での作用かどうかwetの実験を加えながら今後明らかにしていく。細胞を用いた実験では従来までの作用点では起こりえないHIFファミリーの選択的活性化を引き起こすことが確認された。 また、並行して動物実験も進めている。ワイルドタイプのマウスを用いた実験で、化合物Aを与えるとHIFが活性化され、その下流の遺伝子であるエリスロポエチンをはじめいくつかの遺伝子の発現上昇がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は次の四点から進めている。1)合成、2)ドッキングシュミレーション、3)細胞をもちいた実験、4)マウスを用いた実験。 1)の合成の項目では、この一年間に新規の脂溶性誘導体を6種類合成した。脂溶性誘導体となるとそれぞれ1-2段階の反応段階数が増えることとなった。これは、化合物Aの薬物動態パラメータの改善のためであった。化合物Aは脂溶性が低くそのため、化合物の精製時には有機溶媒による再結晶法が有効であったが、溶解性が向上したため、再結晶法を使うことはできず、シリカゲルカラムクロマトグラフィーをする必要があるなど、精製方法に大きな変化が生じた。このような従来と異なる点があったが、良好に進捗している。 2)ドッキングシュミレーションでは、すでに報告されている従来型のPHD阻害剤とは、異なる部位でPHDと強く相互作用することが示唆された。今後この結果を基に、実際の実験でその証拠を示していく予定である。3)細胞をもちいた実験では、細胞レベルでのHIFの活性化をルシフェラーゼアッセイにより確認し、より活性の高い分子への変換への知見を得ている。また、細胞毒性も確認し、HIFたんぱく質の安定化をイムノブロッティング法で確認している。4)同様にマウスを使った実験でも、イムノブロッティング法HIFたんぱく質の安定化を確認し、エリスロポエチン遺伝子の発現亢進も確認している。いずれも順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はより、ヒトに用いる薬の開発をめざし、化合物の構造を最適化していく。また、ハーグ毒性をはじめ様々な毒性試験を行っていく予定である。動物中での薬物の代謝を調べ、その結果から、化合物の構造の最適化を目指す。今後一年でさらに10数化合物を合成する予定である。様々な実験が必要となってくるが、BINDS創薬等先端技術支援基盤プラットフォームなどを利用し、効率的な実験を推し進めていく。また、これらの成果の発表も積極的に行っていく。現在、特許出願中であり、国際特許の出願も現在検討中である。特許出願の結果、学会・シンポジウムやセミナーでの発表が可能となったので積極的に発信し、まずたくさんの研究者に使ってもらえるような研究ツールとして目指し、実際にヒトに用いることのできる経口の虚血治療薬への開発を進める。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で予定通りに予算の消化が進まなかったため。なお、研究の進捗状況については問題ない。繰り越した金額については、試薬購入や研究協力者への謝金に使用する。
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[Journal Article] Photoinduced syntheses and reactivities of phosphorus-containing interelement compounds2020
Author(s)
Yamamoto, Y.; Tanaka, R.; Ota, M.; Nishimura, M.a, Tran, C.C.; Kawaguchi, S.-I.; Kodama, S; Nomoto, A.; Ogawa, A.
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Journal Title
J. Org. Chem.
Volume: 85
Pages: 14708-14719
DOI
Peer Reviewed
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