2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K17762
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
管 析 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80704329)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | CTCL / アディポカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
皮膚悪性リンパ腫は皮膚を原発とする非ホジキンリンパ腫であるが、その大部分はT細胞が腫瘍化した皮膚T細胞リンパ腫(cutaneous T-cell lymphoma: CTCL)である。病初期において皮膚にのみ腫瘍T細胞が増殖するが、進行するとリンパ節や他臓器にも病変を認めるようになる。進行期では多剤併用化学療法や造血幹細胞移植などの治療に抵抗性を示し、診断確定後数年以内に患者が死亡するケースも少なくない。それ故に、CTCLの病態の解明とそれに基づいた有効性の高い新規治療法の開発が必要である。CTCLの腫瘍環境を構成するメインの細胞はT細胞であるが、T細胞以外にもマクロファージや線維芽細胞など様々な細胞が腫瘍増殖、腫瘍環境構築に関わっていることが報告されている。アディポカインは脂肪細胞から分泌されるサイトカインであり、内臓脂肪やインスリン抵抗性と関与している。近年、全身性疾患である乾癬や強皮症などの病態形成にアディポカインが寄与していることが報告されている。CTCLの腫瘍環境におけるアディポカインの役割はいまだ明らかになっておらず、本研究の目的はCTCLにおいてアディポカインが腫瘍環境の構築または腫瘍免疫抑制に寄与していることを明らかにすることである。具体的なアディポカインの種類にはadiponectin、leptin、PAI-1 (plasminogen activator inhibitor-1)、HB-EGF (heparin binding-epidermal growth factor-like growth factor)、resistin、visfatinがある。CTCLにおけるこれらのサイトカインの影響について調べたいと思う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アディポカインの1つであるvisfatinに関して我々はCTCL病変部での発現が亢進していることを明らかにした。具体的には進行期のCTCL患者において脂肪細胞のvisfatin産生が増強していることを患者皮膚検体を用いた特殊染色によって示した。また、血清中のvisfatin濃度が上昇していることをELISAにより確認した。また、CTCL患者の保存血清が少なくなってきているため、現在CTCLの専門外来に通院中の人の血清を回収しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は上記のアディポカインのうちHB-EGFに注目している。過去にCTCLとHB-EGFの関係を調べたものはなく、意義のあるものになるだろう。HB-EGFはELISA kit、染色用の抗体いずれも販売されているので血清中のHB-EGFレベル、皮膚組織における発現を調べることができる。その後はCTCLの複数のヒトのリンパ腫細胞株を使用する予定である。CTCLの一種である菌状息肉症の細胞株であるMyLa cell、セザリー症候群の細胞株であるHut78 cellを始めSeAX cell、HH cell、Ki-JK cellなど複数の細胞株を既に所有している。リンパ腫細胞株をPMA、ionomycinとともにアディポカインで刺激することでIL-4やIL-6、IL-13といたTh2系のサイトカイン発現が変化するかを細胞内染色により確認する。Th2系のサイトカインのみならず、GM-CSFやIL-1beta、IFN-gammaなどの炎症性サイトカイン、IL-10やIL-35、TGF-betaなどの抑制性サイトカイン、IL-17やIL-23などのTh17系のサイトカイン発現を確認することも病態を考察する上で興味深いと考えている。さらに、アディポカイン刺激下でのリンパ腫細胞の生存率、増殖率への影響を検討する。
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