2020 Fiscal Year Research-status Report
真菌の排除における表皮細胞の役割:表皮細胞の興奮と死、排除される真菌の生体内観察
Project/Area Number |
19K17770
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 光麻 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(RPD) (40838801)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カンジダ / 真菌 / 皮膚 / コネキシン / 体細胞突然変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、真菌排除における表皮細胞の役割を明らかにすることである。 本研究では、ギャップジャンクションの構成蛋白であるコネキシン26をコードするGJB2の変異によって発症するKID症候群患者にしばしば起こる、慢性皮膚カンジダ感染に着目した。KID症候群では、全身のGJB2の変異がなぜ慢性の真菌感染につながるのか、全く不明である。 KID症候群の患者のカンジダ感染が起こり、抗真菌薬により治癒した部位に、KID症候群ではない健常者の皮膚のような斑が多数出現していた。この所見から、体細胞突然変異が生じた皮膚上皮細胞が増殖し定着していることが示唆されたため、正常化したような部位から5箇所(*1)、カンジダ感染があったものの以前と同様のKID症候群の皮膚症状を示す部位から5箇所(*2)、カンジダ感染の既往のない部位から2箇所(*3)、皮膚生検を行い、表皮を分離した後に、whole-exome sequencingを行った。すると、*1のすべてのサンプルで、GJB2に新たな、サンプルごとに異なる体細胞突然変異が起こった、皮膚上皮細胞のクローンの拡大が同定された。一方、*2でも体細胞突然変異を有するクローンの拡大が同定されたものの、サンプル内でそのクローン占める割合は*1よりも低く、またGJB2には1つのサンプルを除いて体細胞突然変異を認めなかった。さらに、*3では体細胞突然変異を有するクローンの拡大は見いだされなかった。 以上の結果から、KID症候群患者におけるカンジダ感染は、少なくともGJB2の体細胞突然変異を持つクローンが生存に有利な、選択圧として働くことが強く示唆された。今後、それぞれ異なるGJB2の変異が、どのようにチャネル機能に影響を及ぼすのか検討を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に予定していた解析の前提となる動物モデルの理解のため、多くの労力が必要となり、申請内容の進展は遅れたと言える。 その一方で、実際の患者に極めてユニークな症状が現れていることに気づき、本研究の課題解明に重要な糸口になることが期待される。 当初の研究計画の方向通りではないが、課題の解明に向けての歩みは順調といえると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
カンジダ感染によって出現する正常化したように見える部位は、どのようなメカニズムで体細胞突然変異が起こっているのかを知るため、同部位からのサンプルを用いて、whole-genome sequencingを行い、signature analysisを行う。 また、複数の異なるGJB2の体細胞突然変異は、互いに見分けのつかない皮膚症状を呈するため、Cx26のチャネル機能に一定の方向性で影響を与えることが予測される。そこで、GJB2の体細胞突然変異によるチャネル分子の構造変化をコンピューター上で再現し、機能を予測したい。さらに、培養細胞を用いた実験系でこれらの体細胞突然変異が実際にチャネル機能をどう変化させるかを検証したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の発生/拡大に伴い、研究室の一時的な閉鎖が行われた結果、研究の継続が一時的に困難となった。そのため、次年度への研究計画のずれ込みがあり、研究費も繰越を行う必要が生じた。
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Research Products
(2 results)