2020 Fiscal Year Research-status Report
Discovering the dynamics of basophils in the treatment process of atopic dermatitis
Project/Area Number |
19K17772
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
鷲尾 健 神戸大学, 医学部附属病院, 医学研究員 (80770388)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | アトピー性皮膚炎 / 好塩基球 / IgE / FcεRI |
Outline of Annual Research Achievements |
アトピー性皮膚炎(AD)は増悪と軽快を繰り返す,そう痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くは「アトピー素因」を持ち、すなわちIgE抗体を産生しやすい状況にある。一方で蕁麻疹やアナフィラキシーも病因としてはマスト細胞/好塩基球がIgE受容体を介して活性化し、ヒスタミン等のメディエーターを放出することが機序として考えられている。このようにADと蕁麻疹はどちらもIgEが関係する皮膚アレルギー疾患である。重症のADでは非特異的IgEが非常に高く、そのような例ではダニ特異的IgEが高値となる症例も多い。チリダニはホコリの中に無数に存在しておりAD患者は暴露により容易に即時型反応を頻回に起こしても不思議ではないが、重症のAD症例においてダニ抗原への暴露で即時型反応を起こすことはあまり経験をしない。これらの臨床的な疑問を元に、重症AD患者ではマスト細胞/好塩基球が抑制を受けているのではないかとの仮説を立てた。現在までに研究者らのグループでは、AD 38名、健常人21名の血液を集め、フローサイトメトリを用いて好塩基球の活性化マーカーを調べた。結果、AD患者から得られた好塩基球は定常状態において健常人よりわずかな活性化を認めるが、抗IgE抗体を用いた刺激に対して反応性の低下を示した。またEASIスコアが高値の症例や総血清IgEが高値の症例、すなわちADのより重症例ではこの傾向がより強く認められた。また興味深いことに、AD患者から得られた好塩基球は健常群と比べて、IgEの受容体であるFcεRIを強く発現しているものの、これらの2群では好塩基球の表面に結合するIgEの発現には差異を認めなかった。本年度まで得られた研究成果をAllergology International誌に成果を発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であったアトピー性皮膚炎患者では好塩基球が何らかの抑制を受けているのではないかとの仮説を実証でき、英文雑誌に研究論文を報告することが達成されたため、研究計画としてはおおむね順調に推移している。しかしながら、コロナ禍のために今後の症例登録については難航が予想されるために、今後さらになぜ好塩基球が抑制を受けているのかという疑問に答えるためにはex vivoやin vitroの試験を計画し、追加で実施していく必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
アトピー性皮膚炎の重症例では好塩基球が抑制されていることが示されたため、今後の実施課題としては、まずこれらの症例に対して十分な治療を行い、アトピー性皮膚炎が軽快すれば好塩基球の異常が回復するかどうかを検討する。具体的には、アトピー性皮膚炎に対して強力な治療薬であるデュピルマブを用いて治療された症例で治療前後の好塩基球の状態を比較する。このことで間接的にではあるが、好塩基球の抑制にIL-4/13シグナルの寄与を実証できると考える。さらなる検討課題としては、コロナ禍のためにこれらの登録症例の脱落なども多少見込まれるため、異なるmodalityの実証方法として臨床検体以外でin vitroの実験系を確立し、高IgE状態がIgE-FcεRIとの結合にどのように関与するかなどを検討する必要がある。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍において患者症例の登録ペースがややダウンしたため、機器の使用頻度や消耗品の購入が減少した。また海外での学会発表も予定していたが、これらの事情により断念した。次年度使用分としては、in vitroの実験系を確立するために、実験器具の購入に割り当て、さらに現在進めているさらなる論文の校正費用や投稿費用にも充当する予定である。
|
Research Products
(6 results)