2019 Fiscal Year Research-status Report
Mechanism elucidation of skin hypersensitivity -A new attempt at applying brain function evaluation-
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19K17775
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
鍬塚 さやか 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (20739924)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 皮膚感覚過敏 / 痒み / 神経栄養因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
痒み過敏のメカニズムは体液因子や神経の可塑性等によって部分的に証明されているが、まだ十分な理解が得られておらず、痛み過敏ほど解明されていない。指導教官である室田は、皮膚の真皮線維芽細胞から誘導される神経栄養因子アーテミンが熱過敏を引き起こし、アトピー性皮膚炎などかゆみを生じる皮膚疾患においてかゆみ過敏を生じていることを以前報告した。 本研究では、マウスに経皮的にアーテミンを投与し「痒がる脳」のモデルマウスを作製し、このマウスの脳の活性をマンガン造影MRIによって評価する。MRI撮像は大阪大学 脳情報通信融合センター(CiNet)吉岡芳親教授の協力を得て11.7T小動物用磁気共鳴イメージング装置を用いる。このプロトコールによるプレリミナリーな検討では、アーテミン投与単独で脳全体的の興奮が観察され、暑熱刺激後はさらに強い脳の興奮が観察できた。特に皮質感覚野のバレル構造や海馬、視床下部の興奮が顕著であった。この現象の再現実験を行うことと、アーテミン中和抗体、コンパウンド48/80、ヒスタミンなどや治療薬のシーズがこの脳の異常な興奮にどのような影響を与えるか検討を進める。さらに今後、Nc/Ngaマウスなどアトピー性皮膚炎モデルマウスをはじめ、C57BL/6マウス、BALB/cマウスなどを用いて、中枢神経増感の程度を比較確認し、薬物の効果を検討する。 また、痒みを生じる皮膚疾患におけるアーテミンの関与を免疫染色にて確認する。アーテミンは正常皮膚組織では発現が見られないことから、発現の有無はアーテミンの関与を示唆する。発現を認める疾患、認めない疾患を分子生物学的に評価することで、アーテミンの上流、下流のシグナルを評価する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りに、アーテミンを注射されたマウスを熱刺激させMRIで脳を撮像すると、扁桃体および視床下部の領域が増強されたことを確認できた。アーテミン中和抗体を注射したマウスではこの脳の活性が減弱した。痒みを強く伴う痒疹の皮膚組織においてアーテミンの免疫染色を行うと表皮においてアーテミンの染色が確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
アーテミン中和抗体の作用を確認できたが、アーテミンを中和させるのにマウス一匹あたりにつき大量の抗体が必要であることが判明した。次はコンパウンド48/80、ヒスタミンなど治療薬のシーズがこの脳の異常な興奮にどのような影響を与えるか検討を進める。Nc/Ngaマウスなどアトピー性皮膚炎モデルマウスをはじめ、C57BL/6マウス、BALB/cマウスなどを用いて、中枢神経増感の程度を比較し、それぞれの薬物の効果を検討する。 アーテミンの免疫染色においては、今後アトピー性皮膚炎など対象疾患を増やし比較する。また、ELISA法を用いてヒト血清中のアーテミンを定量的測定し、各皮膚疾患間の比較検討を行う。
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Causes of Carryover |
アーテミン中和抗体量を十分に確保できず実験の症例数を増やせなかったことにより、再現性を確認できなかったため次年度使用が生じた。次年度も引き続きアーテミンの脳への影響を調べるため、コンパウンド40/80、ヒスタミンなど治療薬および、各種マウスの購入費用、アーテミンの免疫染色用抗体試薬、ELISA法の試薬の購入費用として使用する予定である。
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