2023 Fiscal Year Annual Research Report
包括的アプローチによる血管型エーラス・ダンロス症候群の分子遺伝学的発症機序の解明
Project/Area Number |
19K17795
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
山口 智美 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 助教 (90802835)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | エーラス・ダンロス症候群 / 遺伝性結合組織疾患 / 次世代シークエンス / 分子遺伝学的発症機序 |
Outline of Annual Research Achievements |
エーラス・ダンロス症候群(EDS)は各種組織の脆弱性を特徴とする遺伝性結合組織疾患で、14病型に分類される。その中で血管型EDSは、動脈病変、S状結腸破裂、子宮破裂などの致命的な合併症を生じうる。これまでの次世代シークエンス(NGS)解析では7割弱に病的バリアントが検出されていない。本研究では、NGSを軸とした革新的遺伝子解析を通じて血管型EDSの分子遺伝学的発症機序の包括的解明を目指した。 今年度は56例のNGSデータを用いたコピー数解析を追加した。これまで8例においてEDS関連遺伝子にコピー数異常を検出した。血管型EDSにおけるNGS解析結果(NGSデータを用いたコピー数解析結果を含む)についてまとめた論文が国際誌に掲載された。 また、遺伝子全域でのコピー数増加を認めた2例の全ゲノムあるいはCRISPR/Cas9システムで得られた産物を用いたロングリードNGS構造解析、イントロン深部や転写調節領域のバリアント検出を想定した、皮膚線維芽細胞由来のmRNAあるいは培養皮膚線維芽細胞が得られない検体に対するゲノムDNA由来のLong-PCR産物を用いたロングリードNGS解析を行った。解析中であり、現在のところ、血管型EDSの原因と考えられるバリアントは検出されていない。 なお、血管型EDS疑いの症例の中で、類古典型EDS 1型保因者、類古典型EDS 1型と診断された例がそれぞれ1例あった。前者の親および後者は類古典型EDS 1型の原因遺伝子TNXBに両アレル性の病的バリアントを有しており、ともに消化器関連症状を有していた。NGSでの解析が困難とされてきたTNXBにおいて独自のNGS解析法を開発したことにより、類古典型1型においても消化器関連症状のリスクが高いことを示した。これは、血管型EDSの分子遺伝学的機序を考える上で重要な所見となった。
|
-
[Journal Article] Clinical and molecular delineation of classical-like Ehlers-Danlos syndrome through a comprehensive next-generation sequencing-based screening system2023
Author(s)
Yamaguchi T, Yamada K, Nagai S, Nishikubo T, Koitabashi N, Minami-Hori M, Matsushima M, Shibata Y, Ishiguro H, Sanai H, Fujikawa T, Takiguchi Y, Matsumoto KI, Kosho T.
-
Journal Title
Frontiers in Genetics
Volume: 14
Pages: 1234804
DOI
Peer Reviewed / Open Access