2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K17806
|
Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
野島 伊世里 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (10827398)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | Prl2c3 / 老化 / 皮膚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、マウスプロラクチン類似ホルモンPrl2c3に相当するヒトの分子を同定し、その分子の老化への作用及び作用機序を調べることである。Prl2c3はプロラクチンスーパーファミリーの1つであるため、プロラクチンが産生される子宮の培養細胞株(ヒト子宮頸癌細胞株)を対象にPrl2c3抗体が認識するタンパク質を免疫沈降法で分離回収し、Q Exactive Plus四重極/Orbitrapハイブリッド質量分析計で解析を行った(IP-MS)。解析の結果、173個の候補タンパク質を同定した。候補タンパク質がPrl2c3と同様に分泌型タンパク質であること、皮膚における局在が一致していること、機能が類似していること(老化で発現が増加すること)をデータベースで照合した結果、4つのタンパク質が候補として残った。これらのタンパク質を各々強制発現させた細胞株からタンパク質を抽出し、Prl2c3抗体でウエスタンブロット法による解析を行った。コントロールと比べて、Prl2c3抗体が認識するタンパク質の発現が増加する細胞株が1つ確認された。この細胞株で強制発現したタンパク質を精製してマウス胎児線維芽細胞に作用させたところ、老化の指標である細胞分裂抑制作用、SA-βGal陽性細胞数の増加、細胞の肥大化は見られなかった。Prl2c3で見られた細胞老化作用をこのタンパク質は有していないため、対象を変えてIP-MSを再実施することとした。ヒト表皮角化細胞・ヒト皮膚線維芽細胞・臨床検体の皮膚からタンパク質を抽出し、同様の手法でIP-MSによる解析を行った。複数の候補タンパク質が同定されたが、Prl2c3と同様の作用をもつタンパク質の同定には至らなかった。このため現在、ヒト皮膚のPrl2c3抗体による免疫組織染色で局在が確認された基底層をレーザーマイクロダイセクションで回収し、IP-MSでの分析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
IP-MSの解析で同定したタンパク質の中にPrl2c3抗体に結合するタンパク質はあったが、Prl2c3と同様の作用(細胞老化作用)は有しておらず、Prl2c3に相当するヒトの分子の同定にはまだ至っていないことから進捗はやや遅れていると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)Prl2c3はマウス胎児線維芽細胞の老化によって発現が増加する分子の1つとして見出され、マウス及びヒトの皮膚の免疫組織染色で同じ局在を示す。このため、ヒト皮膚で局在が確認された基底層をレーザーマイクロダイセクションで回収し、IP-MSを行いタンパク質の同定を試みる。 2)同定したタンパク質がPrl2c3と同様に細胞老化作用を有するかを調べる。精製したタンパク質を細胞に作用させ、SA-βGAL陽性細胞の割合や細胞のサイズ、老化関連分子p16, p19, p53のタンパク質レベル・mRNAレベルでの発現を評価する。 3)同定したタンパク質の細胞内シグナル伝達経路について、関連の可能性があるチロシンリン酸化、JAK-STAT系との関与を抗リン酸化チロシン抗体などの抗体を用いて調べる。
|
Causes of Carryover |
当初予定していた進度で研究が進んでいないため、その研究に予算を使用することを計画する。
|