2020 Fiscal Year Research-status Report
Regenerative medicine of the nervous system using hair follicle stem cells
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19K17815
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
小原 宏哉 北里大学, 医学部, 助教 (40596483)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 毛包幹細胞 / 脊髄損傷 / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は皮膚毛包のうち、バルジ領域と脂腺付着部の間に分布しているnestin陽性、ケラチン15陰性の毛包幹細胞を発見し、神経細胞・グリア細 胞・心筋細胞・角化細胞等に分化することを明らかにした。毛包幹細胞を用いた再生医療は、倫理面や拒絶反応の問題がなく、早期の臨床応用 が期待される。本研究ではnestin陽性毛包幹細胞が特に神経細胞、グリア細胞に多く分化しやすい傾向を利用し、末梢神経や脊髄といった神経 系への移植を行うことで構造、機能の回復を確認することを目標としている。 我々はまず、マウスの脊髄損傷急性期に対し毛包幹細胞の移植実験を行い、構造の再生、運動機能の改善を証明することができた(Obara K, et al.Stem Cell Rev Rep. 2019 :15;59-66.)。またこの結果を11th World Congress for Hair Research (WCHR2019), 2019, Barcelona (poster discussion)にて報告している。さらに現在、マウスの脊髄損傷慢性期初期に対し毛包幹細胞移植の実験をすすめており、こちらも急性期同様構造の再生、運動機能の改善を証明することができた。こちらは現在論文の投稿中である。 さて、このような再生医療を実現する上で、幹細胞を保存する方法の確立が急務である。例えば全身状態が悪く幹細胞の採取が困難であったり、幹細胞の採取・培養といった手順に一定の期間要するため早期移植がかなわないなどといった弊害が生じる可能性があるからである。よって我々は毛包幹細胞を凍結保存する方法を立証し、保存後も多分化能を損なわないことを確認した(Obara K, et al.Sci Rep. 2019;9 :9326.)。これによって将来的に「毛包バンク」の設立につながることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した実験系をスムーズに実行することができ、事前に予測していた結果を得られている。さらにはその結果を論文に投稿し受理され、学会にて発表し国内外の施設にアピールすることができている。よって研究内容は順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在投稿中であるマウスの脊髄損傷慢性期初期の毛包幹細胞移植の有効性については画期的な結果といえる。基本的に脊髄損傷慢性期では幹細胞移植だけでは機能改善が見込めず、リハビリテーションの併用や瘢痕形成抑制のための投薬、幹細胞移植のためのデバイス利用などが必要と考えられている。今回の結果は慢性期の中でも初期にはなるものの、毛包幹細胞単独の効果で機能改善を証明できたのは大きな成果である。この点からも毛包幹細胞は神経の再生医療においてiPS細胞やES細胞に比較し有効であると考えられる。 今後さらに脊髄損傷慢性期の移植へと実験を移行し、さらにはラット、コモンマーモセットへと種を拡大させ、最終的にはヒトに対して臨床試験を行うことを目標とする。 また、脳出血モデルマウスの脳内に毛包幹細胞を投与することで細胞が生着し、さらには機能回復につながることが証明できた。こちらの内容については現在論文投稿準備中である。
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Causes of Carryover |
計画していた実験系で予測されたマウスの使用数が良好な結果が得られたことから、予定より少なく済んだため、物品費の支出が少なかったことが次年度使用額が生じた理由として考えられる。よって残額は次年度に繰り越した後,物品費としてマウス購入に充てることを検討している。
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