2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K17830
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
淺田 騰 岡山大学, 大学病院, 助教 (70803055)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自然リンパ球 / 造血幹細胞ニッチ |
Outline of Annual Research Achievements |
すべての血液細胞の祖となる造血幹細胞は骨髄中の「ニッチ」と呼ばれる特別な微小環境が必要で、ニッチを構成する細胞群や、造血幹細胞制御機構の研究が進んでいる。本研究では、新規リンパ球サブセットである自然リンパ球(Innate lymphoid cell:以下ILC)による、造血幹細胞制御や造血幹細胞ニッチ制御機構を解析した。まず、定常状態におけるマウスの解析で、ILCの3つのサブセットのうち、骨髄中にはILC2の特徴を持つ細胞が多く含まれることが明らかとなった。この骨髄中に含まれるILC2の造血制御における機能を検証するため、一時的な骨髄抑制を引き起こし、造血の回復過程を検討できるマウス全身放射線照射モデルを用いて解析を行った。マウスに4Gyの放射線照射を施行し、経時的に骨髄、脾臓での細胞数、造血幹細胞、ILC2の定量をFACSを用いて行った。照射後10日で骨髄中の造血幹細胞が回復し始め、21日で照射前と同程度にまで回復するが、骨髄中のILC2は、造血幹細胞の回復開始のタイミングと一致する照射後10日に一時的に著しく増加していた。また、脾臓においても同様の現象がみられ、造血幹細胞の回復開始と一致してILC2が増加することが明らかとなった。次に、放射線照射後のILC2の回復と造血幹細胞ニッチ回復の関係を解析するため、同様のタイミングで骨髄中の造血幹細胞ニッチとして知られている血管周囲ニッチ細胞の定量を行なったところ、血管周囲ニッチ細胞は造血幹細胞の回復がみられる照射後21日目にも回復をみとめず、長期にわたって回復しないことが明らかとなった。以上の結果は、骨髄抑制後の造血回復過程において、ILC2の増加が造血幹細胞回復の契機なっている、あるいは回復を促す働きを持つことを示唆しており、その作用は骨髄中のニッチ細胞を介するものではないことが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在、野生型マウスを使用した実験を行なっているが、自然リンパ球そのもの、あるいはその機能を生体内で除去できる動物モデルの解析が実施できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
野生型マウスを使用した骨髄イメージングを用いて骨髄内の自然リンパ球の位置解析を行い、特異的な分布を示すかどうかを検討する。また、造血制御における自然リンパ球の役割を生体内で直接評価できる動物モデルの確立をし、生体内での自然リンパ球の機能解析を進めていく。
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Causes of Carryover |
動物購入費、抗体試薬等の購入費が節約でき、結果として予定よりも下回った。次年度では実験用動物購入費、共同機器利用費が増加することが見込まれるため、この費用に充填する予定である。
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