2019 Fiscal Year Research-status Report
難治性白血病の活性化チロシンキナーゼ特異的ユビキチンプロテアソーム系と耐性化
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19K17852
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
野上 彩子 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (30754890)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | AML / FLT3 / ITD / REDD1 / proteasome / DUB |
Outline of Annual Research Achievements |
急性骨髄性白血病(AML)や急性リンパ性白血病(ALL)およびその前病変とも言うべき骨髄増殖性腫瘍(MPN)の発症と進展には、共通してFLT3-ITD, JAK2V617FおよびBCR/ABL等の恒常的活性化チロシンキナーゼ変異体による増殖シグナルの異常活性化が主要な役割を果たす。中でもAMLの約3割を占める、FLT3-ITD変異は、予後不良因子として知られるが、近年上市されたFLT3阻害薬単剤治療ではその疾患制御は困難であり、病態生理の解明は喫緊の課題である。申請者はこれまで、FLT3-ITD陽性細胞で、Akt阻害薬やPI3K阻害薬などの分子標的薬への治療抵抗性がSTAT5の活性化に起因することを見出し、続いて、Pimキナーゼがその実行分子であることを解明し、これらの分子が腫瘍の発症・進展のみならず治療抵抗性をも担うことを報告した。さらに、本研究ではFLT3の分解過程に着目し研究を展開した。 本年度、プロテアソーム阻害薬であるボルテゾミブやカーフィルゾミブが、FLT3-ITD陽性AML ではREDD1の発現亢進によりmTORC1経路抑制効果を示し、STAT5およびPimの抑制によりMcl-1の抑制を介してアポトーシスを誘導することを見出し報告した(Nogami A. et al., Transl Oncol, 2019)。さらに、WP1130等の脱ユビキチン化酵素阻害薬処理を施したFLT3-ITD陽性AMLでは、USP9Xの抑制により、FLT3分子がK63を介してポリユビキチン化を受けてaggresomeへ移行することを確認した。その結果、下流のシグナル活性化阻害、酸化ストレス誘導性のp38・JNK活性化、およびDNA損傷シグナル活性化が生じ、相乗的にアポトーシスが誘導される事を見出し報告した(Akiyama H. et al. Cancer Lett, 2109)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
恒常的活性化チロシンキナーゼ変異体が急性骨髄性白血病(AML)や急性リンパ性白血病(ALL)およびその前病変とも言うべき骨髄増殖性腫瘍(MPN)の発症と進展のみならず治療抵抗性にも寄与することを、臨床的に非常に予後が不良であるAMLのFLT3-ITDを中心に示し得た。活性化チロシンキナーゼ変異体からのシグナル伝達と治療抵抗性獲得機構との関連を解明すべくさらに解析を行い、変異体FLT3-ITDに関して、既存の薬剤であるプロテアソーム阻害薬ボルテゾミブやカーフィルゾミブがREDD1の発現を亢進することでAML細胞でのmTORC1経路抑制効果を示し、STAT5やPimの抑制によりFLT3-ITD陽性細胞によりMcl-1の抑制などを介してミトコンドリア依存性の内因性経路を介したapoptosisを相乗的に誘導する機構を明らかにすることが出来た。さらには、脱ユビキチン化酵素阻害薬によるUSP9Xの抑制により、FLT3-ITD はK63を介してポリユビキチン化を受け、aggresomeへ移行する結果、下流のシグナル経路活性化阻害や、酸化ストレス誘導性p38・JNK活性化、DNA損傷シグナル活性化が相乗的にapoptosisを誘導する事を明らかにした。これらの成果により、造血器腫瘍における活性化チロシンキナーゼ変異体からのシグナル伝達と治療抵抗性獲得機構との関連を明らかし、新規治療法の開発を目指すという目標達成に向けて着実に研究を進展させることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、BCR/ABL、FLT3-ITD、Jak2-V617Fなどの恒常的活性化チロシンキナーゼ変異体がmTOR/4EBP1/eIF4E経路の異常活性化等を介して、治療抵抗性をもたらす分子機構の詳細を明らかにするため、AML細胞などで高発現が報告されているRskキナーゼの関与を種々のRsk阻害薬、Rsk1・Rsk2のshRNAによりknock downした白血病細胞やCRPR/Cas9法によりknock outした白血病細胞を用いて検討する。これにより、Rskキナーゼの恒常的活性化チロシンキナーゼ変異体による活性化機構と、これらの変異体からのシグナル伝達系における役割を、特にmTOR/4EBP1/eIF4E経路の異常活性化への関与と治療抵抗性獲得機構における意義を中心として明らかにし、抗癌剤とこれらに対する分子標的薬を組み合わせた根治的な造血器腫瘍の統合的治療法の開発を目指す。さらにDUB阻害薬等による異常チロシンキナーゼのプロテアソームを介した分解やaggresomeへの移行に関しては、他のDUB阻害剤を用いた検討をはじめ、FLT3-ITDのみならず、Jak2-V617Fを発現した白血病細胞株や臨床検体等への検討対象の拡張、ユビキチン化の分子様式の解明まで掘り下げることで、新規治療法開発へ向けて多面的に検証を加える。
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