2019 Fiscal Year Research-status Report
B細胞性腫瘍における解糖系亢進の新規機序の解明と治療標的としての有用性の検証
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19K17854
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Research Institution | National Hospital Organization Nagoya Medical Center |
Principal Investigator |
今橋 伸彦 独立行政法人国立病院機構(名古屋医療センター臨床研究センター), その他部局等, 血液内科医師 (90726861)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | B細胞性腫瘍 / 代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性リンパ腫などのB細胞性腫瘍に対する治療としては、抗がん剤治療や免疫を利用した治療法(同種造血幹細胞移植、キメラ抗原受容体T細胞療法、免疫チェックポイント阻害薬など)が行われているが、その有効性は未だ不十分である。その原因の一つとして、腫瘍の代謝が亢進していることにより、腫瘍の抗癌剤抵抗性がもたらされることや抗腫瘍免疫が抑制されることが報告されている。腫瘍の代謝が亢進する機序としては、癌関連遺伝子の異常(c-Myc, p53など)などが知られているが、本研究では、B細胞性腫瘍の代謝がT細胞により活性化され、そのことがB細胞性腫瘍の治療抵抗性に寄与している可能性を検討することを目的とした。 まず、T細胞がB細胞性腫瘍の解糖系に与える影響をB細胞性腫瘍の臨床検体を用いて検討したところ、T細胞との共培養により、B細胞性腫瘍のグルコースアナログの取り込みが増加することが明らかになり、T細胞によりB細胞性腫瘍の解糖系が亢進されることが示唆された。また、同時にB細胞性腫瘍の生存は、T細胞により支持されることも確認された。次に、T細胞によるB細胞性腫瘍の解糖系亢進が、B細胞性腫瘍の生存支持に関与しているか否かを複数の解糖系の阻害剤を用いて検討したが、その可能性は否定的であった。以上のことから、これまでに検討したB細胞性腫瘍では、T細胞により解糖系は亢進されるものの、そのことが、B細胞性腫瘍の進展に寄与している可能性は否定的であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
T細胞がB細胞腫瘍の解糖系や生存に与える影響を評価する系を確立することにやや時間を要した。しかし、確立後は安定的に研究の仮説を検討することができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに検討したB細胞性腫瘍では、本研究の仮説を支持する結果が得られなかったが、T細胞によりB細胞性腫瘍の生存が支持されることが確認された。このことは既に報告されているが、その機序について、これまで明らかになっていない別の機序が存在するか否かについて検討を進めている。また、B細胞性腫瘍の種類を増やして、本研究仮説を検討していく予定である。その他、昨年度はT細胞がB細胞腫瘍に与える影響を評価する系を確立することにやや時間を要したが、その原因の一つとして、臨床検体を用いたために、検体間のばらつきが大きかったことがあげられる。そのため、より効率的に研究を推進するために、細胞株を用いることを開始している。
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Causes of Carryover |
研究の遂行にあたり、やや時間を要した部分があったため次年度使用額が生じた。 次年度の予定額に合算して支出する予定である。
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