2019 Fiscal Year Research-status Report
CRISPRスクリーニングを用いたATRA併用AML新規分化誘導療法の開発
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19K17859
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山内 拓司 九州大学, 大学病院, 助教 (20796213)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | AML / ATRA / synthetic lethal |
Outline of Annual Research Achievements |
CRISPR/Cas9 システムによる遺伝子改変技術の進歩により、タンパクをコードする全ゲノムをターゲットとした、細胞の表現系(増殖・分化など)に基づいた責任遺伝子のスクリーニングが可能となった。申請者は、この遺伝子改変技術をいち早く導入し、全ゲノムスクリーニングをAMLの増殖・分化に関わる遺伝子の探索に応用することで、AML細胞の分化を誘導する因子として、 DCPS (decapping enzyme scavenger)を同定し、その阻害剤の抗白血病効果を報告した 。さらにこのスクリーニングを独自に応用し、CRISPR全ゲノムスクリーニングを抗白血病薬と併用することで、その薬剤と協働してAML細胞死を誘導する遺伝子(synthetic lethal)、その薬剤に耐性を示す遺伝子(drug resistant)を見いだすことが出来ると考えた。 ATRAはAPLの第一選択薬であるが、その分化誘導効果は PML-RARα遺伝子を有するAPL細胞に限られる。申請者は ATRA 刺激に加えて他のタンパク・複合体の機能を阻害することで、ATRA の分化・細胞死誘導効果をより効率よく惹起できると仮説を立て、ATRA存在下でCRISPR全ゲノムスクリーニングを行い、ATRAと協働してAML細胞の分化・細胞死を誘導する新規遺伝子を複数同定した 。ATRA 存在下でのみ欠損する遺伝子群には、遺伝子抑制に必須のH3ヒストンテイルのメチル化 (H3K9me3) に作用するHUSH(human silencing hub)複合体を構成する因子が全て含まれており、ATRA刺激とHUSH複合体の機能阻害が AML 細胞の分化誘導を促進することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
HUSH 構成因子(Tasor, Mphosph8, Pphln1, Morc3)の各因子を欠損したヒトAML細胞 (MOLM-13,OCI- AML3)を CRISPR/Cas9 で樹立し、各変異細胞株のATRAによる分化能を、FACSを用いたEdU/DAPIによる細胞周期解析、骨髄・単球系分化マーカー (CD11b, CD15など)の発現レベル解析、サイトスピン標本のMay-Giemsa 染色後の鏡検などの手法で解析し、 各因子の阻害がAML細胞分化に及ぼす影響を検討した。 Morc3に関しては、その欠損がATRAと協働してAML細胞死を誘導することが示されたが、他のHUSH構成因子(Tasor, Mphosph8, Pphln1)に関しては、その欠損がAML細胞死を誘導することが明らかではなかった。 この理由として、ヒトーマウス細胞間差異の可能性を考え、マウスAML細胞を用いて、各HUSH構成因子欠損細胞株を作成し、確認しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように、まずはマウスAML細胞株を用いて、HUSH構成因子欠損とATRAとのAML細胞死相乗効果を確認する。 確認がとれた後に、1)HUSH複合体構成因子欠損AML細胞株のATRA存在下・非存在下でのトランスクリプトーム解析、2)HUSH複合体構成因子を標的としたCRISPR/Cas9-SM法による機能的アミノ酸残基・ドメインの同定、3)HUSH複合体構成因子欠損における全ゲノムレベルでのエピゲノム変化の解明、を予定している。
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