2019 Fiscal Year Research-status Report
成人T細胞性白血病リンパ腫におけるSTAT3活性化とインターフェロン療法の関連性
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19K17862
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
森近 一穂 琉球大学, 医学部附属病院, 医員 (90793943)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 成人T細胞性白血病 / HTLV-1 / JAK-STAT経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
ATLLとリン酸化STAT3発現の臨床病理学的解析の結果について纏め、Cancer Sci. 2019 Sep;110(9):2982-2991.に掲載された。その詳細を簡潔に以下に纏めた。 【背景】 Janus kinase (JAK)-STATシグナル経路の活性化とATLLの病態との関連は未だ不明である。 【方法】 ATLLの診断時に採取された116症例のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)標本を解析した。悪性リンパ腫におけるJAK-STAT経路の恒常的活性化の指標として報告されているリン酸化STAT3 (pSTAT3)・pSTAT5・pSTAT6抗原の発現を酵素抗体法で検討した。また、FFPE標本から抽出したDNAを用いてSTAT3体細胞遺伝子変異解析を行った。 【結果】 ATLL腫瘍細胞においてpSTAT3抗原陽性率が43%であったのに対し、pSTAT5およびpSTAT6抗原陽性率は極めて低値であった(それぞれ3 %, 0 %)。シークエンス解析が可能であった92症例のうち、STAT3体細胞遺伝子変異検出率はくすぶり型で36 %、その他の病型で19 %と、くすぶり型で多い傾向が認められた。多変量解析により、くすぶり型におけるpSTAT3抗原陽性は70歳未満群やindolent ATL-prognostic index scoreにおけるlow-riskもしくはintermediate-risk群の場合と同様に、全生存期間(OS)や無増悪生存期間(PFS)との間に有意な相関が示された。 【考察】 JAK-STAT3経路活性化の評価はATLLの病型別の発がん機構の解明に有用であることが示唆された。今後、ATLLにおけるJAK-STAT経路のさらなる詳細の解明を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
我々は8種類のATL細胞株のpSTAT3タンパク発現状態によって、Interferon-α治療の効果が予測出来る傾向を認めている。次に、この傾向がどの様な分子生物学的メカニズムによるものかを説明するために、ATL細胞株(MT-2およびHUT-102)にCRISPR/Cas9法を用いてSTAT3遺伝子の発現操作を試みた。しかし、これらの細胞株は条件を工夫してもCRISPR/Cas9自体によって細胞が死滅に至ってしまい、難渋している。 現在、臨床業務に多くの時間が費やされており、纏まった時間を研究に充てられず、これ以降は進んでいない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の目標はATL細胞株に対してshRNAでSTAT3タンパク発現を特異的に減少させて、ATL細胞株におけるpSTAT3タンパクとInteferon-αの関係についての分子生物学的メカニズムを解明する。現在、この研究手法を考察中である。 in vitro実験に加えて、臨床データを後方視的にかつ経時的に解析をすることで、リン酸化STAT3発現以外に予後良好を示す臨床因子を検討している。Cancer Sciに掲載された様にpSTAT3発現はインドレント型ATLの予後良好因子であるが、臨床データ所見と併せることでインドレント型ATLにおける生命予後をさらに層別化することが可能であると考える。
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Causes of Carryover |
研究が計画よりも遅れているため、使用していない経費があるため。
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