2019 Fiscal Year Research-status Report
Investigating a novel therapeutic strategy for preleukemic clonal hematopoiesis based on proinflammatory cytokine-mediated cell extrinsic mechanism of clonal expansion
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19K17864
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
國本 博義 横浜市立大学, 医学部, 助教 (80464923)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | TET2 / GM-CSF |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、まずTet2欠失造血幹細胞の幹細胞機能(自己複製能)に対するIL-1βシグナルの影響を調べた。賦形剤またはIL-1βを25ng/mLの濃度で添加してメチルセルロース軟寒天培地上で造血幹細胞を含む野生型またはTet2欠失マウス骨髄細胞を連続継代培養したところ、野生型に比べてIL-1β添加群でTet2欠失細胞の継代培養能の軽微な増強がみられたもののコロニー形成能は賦形剤添加群と有意差を認めなかった。以上から、IL-1β刺激によりTet2欠失造血幹細胞の幹細胞機能が維持又は増強されるという仮説は成立しないことが判明した。ヒトTET2変異は造血器腫瘍の中でも単球の増加を伴う慢性骨髄単球性白血病(CMML)で変異頻度が高く、血球系列特異的Tet2欠失マウスもヒトと同様に単球系細胞の増加を伴うCMML様の病態を呈することから、TET2の機能喪失は造血幹細胞の自己複製能を増強させるのみならず骨髄単球系列へ分化を誘導すると考えられる。骨髄単球系への血球分化・成熟には顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)や顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)が深く関与しているが、これら骨髄単球系サイトカインに対するTet2欠失細胞の挙動については不明な点が多い。そこで申請者らは、骨髄単球系サイトカイン(G-CSF、M-CSF、GM-CSF)をそれぞれ単独で添加して野生型またはTet2欠失マウス骨髄細胞をメチルセルロース培地上で連続継代培養を行なった。その結果、GM-CSF(10ng/mL)を添加した場合では、サイトカイン非存在下またはIL-1β添加群に比べて野生型細胞はコロニー形成能が減弱する一方、Tet2欠失細胞はコロニー形成能・継代培養能が継代培養を重ねるごとに増強することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、Tet2欠失骨髄マクロファージが産生するIL-1βにより、正常造血幹細胞は幹細胞機能が低下して正常造血クローンが縮小する一方、Tet2欠失造血幹細胞は幹細胞機能が維持又は増強されTet2欠失血球クローンが骨髄内で相対的に増殖するのではないかという仮説を立てた。本仮説を検証するためTet2欠失造血幹細胞の幹細胞機能(自己複製能)に対するIL-1βシグナルの影響を調べたが、IL-1β添加群でTet2欠失細胞のコロニー形成能は賦形剤添加群と有意差を認めなかった。以上から、IL-1β刺激によりTet2欠失造血幹細胞の幹細胞機能が維持又は増強されるという仮説は成立しないことが判明し、当初の研究計画からの修正を余儀なくされた。 一方骨髄単球系サイトカインに対するTet2欠失細胞の挙動を明らかにするため、骨髄単球系サイトカイン(G-CSF、M-CSF、GM-CSF)をそれぞれ単独で添加して野生型またはTet2欠失マウス骨髄細胞を連続継代培養したところ、GM-CSF(10ng/mL)を添加した場合では、サイトカイン非存在下またはIL-1β添加群に比べてTet2欠失細胞はコロニー形成能・継代培養能が継代培養を重ねるごとに増強することが確認された。以上より、骨髄単球系サイトカインGM-CSFがTet2欠失造血幹細胞の自己複製能(幹細胞機能)を増強させるとともに、GM-CSFに対する感受性が異なるために野生型に比べてTet2欠失細胞は骨髄単球系へ分化がシフトしやすいのではないかと考えられ、新たな研究仮説を検証するべく研究を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究ではTet2欠失造血幹細胞の血球分化、幹細胞機能、細胞内シグナル、アポトーシス・細胞周期に対するGM-CSFシグナルの影響およびGM-CSFシグナル阻害の治療戦略としての意義を明らかにする。この目的のため、以下の実験を行う。 実験①:GM-CSFが野生型またはTet2欠失造血幹細胞の血球分化に与える影響を明らかにするため、野生型又はTet2欠失造血幹前駆細胞をGM-CSF存在下で培養し、Tet2欠失細胞で単球系細胞が増幅しているかを明らかにする。実験②:Tet2欠失造血幹細胞の幹細胞機能に対する生体内でのGM-CSFの影響を調べるため、野生型とTet2欠失骨髄細胞を移植したキメラマウスに生理食塩水又はGM-CSFを投与し、生理食塩水投与群に比べてGM-CSF投与群でTet2欠失細胞の生着率が増加し、単球系への分化が亢進しているかを調べる。実験③:GM-CSF刺激後のTet2欠失造血幹細胞は野生型に比べてアポトーシスが抑制されているのか、細胞周期が静止期に止まっているのかを明らかにするためAnnexin V/DAPI染色法やKi67/DAPI染色法を行い、アポトーシス分画及び静止期分画の比率を比較する。実験④:GM-CSFがTet2欠失造血幹細胞の細胞内シグナルに与える影響を明らかにするため、野生型又はTet2欠失造血幹細胞をGM-CSF存在下で培養し、Tet2欠失によりCSF2R(GM-CSF受容体)下流のJAK/STAT・PI3K/AKTシグナルが変化するかを調べる。実験⑤:CSF2Rシグナルの抑制がTet2欠失細胞の細胞増殖を抑制するかを調べるため、野生型とTet2欠失骨髄細胞を移植したキメラレシピエントマウスに抗CSF2R中和抗体を投与して、Tet2欠失細胞移植群で特異的にCD11b陽性単球系細胞の増加が抑制され生着率が低下するかを調べる。
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Causes of Carryover |
本研究では、IL-1β刺激によりTet2欠失造血幹細胞の幹細胞機能が維持又は増強されるという仮説は成立しないことが判明し、当初の研究計画からの修正を余儀なくされた。このため、申請時に想定していた使用計画通りに支出が進まず、次年度使用額が生じる要因となった。今後の研究推進方策の欄に記載の通りの研究計画を遂行するために、以下のような新たな使用計画を策定した。 実験動物費用(1200千円、マウス飼育費、骨髄移植レシピエント用マウス購入費) 試薬備品購入費(2000千円、マウスGM-CSF、CD11b陽性・c-Kit陽性細胞回収用磁気ビーズキット、フローサイトメトリー用抗体試薬、WB用抗体、メチルセルロース寒天培地、培養液及びリン酸緩衝生理食塩液、CSF2R中和抗体(MAB1037)、ピペッター、チップ、細胞培養用ディッシュ・プレート)
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Research Products
(1 results)