2020 Fiscal Year Research-status Report
予後不良多発性骨髄腫における悪性能獲得機序と新規治療開発:ARK5に注目して
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19K17866
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
木下 史緒理 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (70832062)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ARK5 / multiple myeloma / E-cadherin |
Outline of Annual Research Achievements |
予後不良な多発性骨髄腫では、早期の多剤治療への耐性獲得および髄外病変の進展がみられる。ARK5は予後不良染色体異常(t(14;16)転座およびt(14;20)転座等)で発現するlarge MAF familyによって恒常的に発現している。ARK5は上皮系腫瘍では上皮間葉転換(EMT)による転移の促進に関与すると報告されており、多発性骨髄腫においても悪性能獲得に関与している可能性がある。本研究では、骨髄腫細胞の悪性能獲得のメカニズムとして、①骨髄腫細胞の分子標的薬への耐性獲得 ②髄外病変の進展の促進 の2点におけるARK5の関与を世界で初めて解明し、ARK5活性化による悪性度の高い骨髄腫細胞に対する有効な治療法の探索を目的とする。 ARK5の良好なknock down株の作成をトライすることと並行し、ARK5阻害薬の作用機序を検討した。ARK5阻害薬が骨髄腫細胞株、患者由来CD138陽性細胞の増殖を抑制することはすでにデータが得られている。固形がんではARK5はEMTに関連すると同時にmTOR経路を阻害すると報告されており、骨髄腫においても同様の経路をまず検討した。 骨髄腫において、E-cadherinは低酸素状態になると、発現が低下し、骨髄腫の髄外進展を促進する、と既報がある。ARK5が低酸素になると発現が増強することは昨年度確認しており、髄外進展の機序の解明の一助となると思われた。そこで、細胞株、患者検体を用いて、EMTに関連するE-caherinとARK5との関連についても今年度より検討を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
固形がんでにおいては、ARK5をknock downすると、E-cadherin抑制因子の発現が低下し、E-cadherinの発現が増強し、転移が抑制されると報告されている。骨髄腫において、E-cadherinは低酸素状態になると、発現が低下し、骨髄腫の髄外進展を促進する、と既報がある。そこで、まず、骨髄腫におけるE-cadherinについて検討した。細胞株でE-cadherinの発現を確認すると、全く発現しない細胞株が多数であり、E-cadherinの発現を認めたものは、RPMI8226、SACHI、JJN3であった。この3細胞株はすべてARK5の発現のある細胞株であった。患者骨髄由来CD138細胞の検討では、これまで検討が終了した71例中、E-cadherinの発現を認めたものは、17例(24%)であった。E-cadherinの陽性陰性でOSに差はなかったが、ARK5とともに検討すると、ARK5陽性かつE-cadherin陽性群で最もOSが短く、ARK5陰性かつE-cadherin陽性群で最もOSがよかった。 また、固形がんにおけるARK5の作用機序には、mTOR経路が関与するとの既報がある。 そこでARK5阻害薬を用いて、作用機序の検討を進めた。ARK5阻害薬により、cleaved-cas3,8,9の発現増強を認め、アポトーシスを進行させてることは確認された。また、mTORの発現は低下しておりmTOR経路が関与している可能性はある。また、c-mycの発現低下も確認された。 しかし並行してトライしているARK5のknock down株、過剰発現株の作成が予定通りすすんでおらず、そちらの検討が全くすすんでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
骨髄腫では、低酸素下において、E-cadherinの発現が低下し、骨髄腫細胞が髄外へ進展し、進展部位で接着して増殖する際に、E-cadherinの発現が再度上昇する、と報告されている。今年度得られた知見から、すべての骨髄腫にE-cadherinが発現しているわけではないこと、ARK5の発現とE-cadherinの発現に直接関連がないことがわかった。ARK5陽性かつE-cadherin陽性細胞でもっともOSが短い、との結果から、ARK5陽性骨髄腫では、腫瘍増殖とともに腫瘍細胞が低酸素下におかれると、ARK5の発現が増強し、E-cadherinの発現低下がおこり、腫瘍進展がしやすい環境となっているのではないか、反対に、ARK5陰性E-cadherin陽性骨髄腫では、E-cadherinの発現低下をきたしにくく、腫瘍進展をしにくい環境が維持されるのではないか、と仮説をたて、今後検討をすすめる予定である。ARK5とE-cadherinの関係を追及することで、髄外病変進展に対するARK5のはたらきにつきより検討を深め、骨髄腫の進展の機序を解明したいと考えている。 また、引き続き、ノックダウン株、過剰発現株の作成をトライし、ARK5の作用機序を解明したい。さらに引き続いて、vivoの検討を予定していきたい。 最終年度となるため、論文作成のため、これまでのデータをまとめていく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は研究に必要な物品に高額なものが含まれておらず、予定よりも使用額が少なくなった。また、本研究に関する学会参加や論文作成がすすんでおらず、旅費の使用もなかったため。
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