2019 Fiscal Year Research-status Report
SLE患者由来iPS細胞を用いた研究ツール開発・創薬研究
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19K17883
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
夏本 文輝 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20837653)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 全身性エリテマトーデス / T細胞 / B細胞 / NK細胞 / iPS細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
全身性エリテマトーデス (systemic lupus erythematosus; SLE) は多彩な臓器障害を示す自己免疫疾患であり、免疫学的な異常として形質細胞様樹状細胞 (plasmacytoid dendritic cell; pDC) によるI型interferon (IFN) 産生亢進とB細胞による自己抗体産生が特徴である。T細胞は免疫の制御において中心的な役割を有し、SLEの病態形成に重要である。ゲノムワイド関連解析などによりこれらの免疫細胞に遺伝的背景に基づく異常が存在することが示唆されている。患者の免疫細胞の絶対数が少ないこと、治療及び環境などの背景因子の不均一性などがこれまで研究を難しくしている。そこで申請者らは宿主のゲノムを引き継ぎ、環境及び治療の影響が少なく、無限のソースとなる人工多能性幹細胞 (induced pluripotent stem cell; iPS細胞) に注目した。 本研究の目的はiPS細胞からリンパ球 (NK細胞、T細胞、B細胞など) への分化培養法を確立し、SLE関連 Single Nucleotide Polymorphism (SNP) knock in株の作成を通して、SLE患者由来iPS(SLE-iPS)細胞由来リンパ球を用いた薬剤スクリーニングの系を構築することにより、リンパ球におけるSLEの新規治療ターゲットを明らかにすることである。 本年度はNK細胞、T細胞、B細胞への分化誘導法の検討を行なった。既報及び独自の方法による分化誘導効率の違いを検討した。CD3-CD19-CD14-CD56+NK細胞、CD3+CD19-T細胞及びCD3-CD19+(λlike発現、VpreB発現)preB細胞への分化培養に成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は①iPS細胞からリンパ球への分化培養法の検討及び②SLE-iPS細胞由来リンパ球を用いた薬剤スクリーニングの系の構築である。 本年度は上記の①に当たるNK細胞、T細胞、B細胞への分化誘導法の検討を行ない、既報及び独自の方法によりCD3-CD19-CD14-CD56+NK細胞、CD3+CD19-T細胞及びCD3-CD19+(λlike発現、VpreB発現)preB細胞への分化培養に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
SLE-iPS細胞を用いる利点と難点は共にその遺伝背景にある。単一遺伝子疾患と違い、SLEをはじめとした自己免疫疾患は複数の原因SNPやVariantが疾患の発症や病勢に関連することが示唆されている。全ての原因の特定やその原因と免疫的現象との関連を証明することによる創薬は困難である。SLE-iPS細胞から病原細胞への分化培養により薬剤スクリーニングのツールとして用いることができる。また、SLE-iPS細胞におけるゲノム編集は、SLEの遺伝背景の中におけるSNPやvariantの影響を観察することができる。薬剤スクリーニングにおける適切なコンパウンドの選択、SLEの遺伝背景検索目的にSLE-iPS細胞のwhole exome解析あるいはwhole genome解析を行なう予定である。 分化誘導に関してこれまでにOP9、10T1/2、MS5などのfeeder細胞を使用し、一定の効果は得られたものの、成熟リンパ球への誘導には不十分であった。今後はCD40LやBAFF、その他の遺伝子を発現したfeeder細胞を作成の上分化培養を行なう予定である。また、Flt-3, SCF, IL-4, IL-10、IL-21などのサイトカインの添加タイミング、量、期間、組み合わせを詳細に検討する予定である
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの蔓延により2020年に入ってからの科研費を使用した研究の完全な中断を余儀なくされた。 緊急事態宣言解除後に速やかに研究を再開、効率よく進めたいと考えている。
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