2019 Fiscal Year Research-status Report
芳香族炭化水素受容体を介した免疫学的環境変化が線維化病態に与える機序の解明
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19K17893
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
武井 裕史 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (20644991)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 芳香族炭化水素受容体 / 線維化 / 制御性T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
芳香族炭化水素受容体(Aryl hydrocarbon receptor, AhR)が線維化病態に与える影響を考察するため、AhRリガンドの1つであるFICZ(5,11-Dihydroindolo[3,2-b]carbazole-6-carboxaldehyde)投与下にブレオマイシン誘導肺線維症モデルマウスを作成した。予備実験においてFICZ投与が生存率を改善することが示唆されており、まずは線維化病態の改善がみられているかをブレオマイシン投与3週後の肺組織の半定量的な評価、可溶性コラーゲンの定量で行った。その結果FICZによる線維化の改善が認められ、上記生存率の改善が線維化の改善によるものであることを確認した。 また、ブレオマイシン投与後1週の肺および脾臓細胞のFACS解析により同モデルにおけるFICZ投与後の免疫学的環境の変化を解析した。その結果、肺、脾臓ともCD3+T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、γδ+T細胞、B220+B細胞、NK1.1+NK細胞の総数には変化を認めなかった。しかし、既報よりAhRのシグナルがT細胞分化に影響を与えることを考慮しCD4+T細胞、γδ+T細胞のサブセットをより詳しく解析した所、FICZ投与により肺のCD4+Foxp3+制御性T細胞(Treg)が増加、炎症性のサブセットのCD4+IFNγ+T細胞、γδ+IL-17A+T細胞が減少していることが判明した。ブレオマイシン誘導肺線維症モデルマウスは、肺に起きた炎症の結果として線維化が起こることが知られている。以上よりFICZはTregの増加を介して肺の炎症を抑制し、結果として線維化病態を改善していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ブレオマイシン誘導肺線維症モデルマウスに対する芳香族炭化水素受容体(AhR)刺激下での生存率、線維化、免疫学的環境の変化を予定通り解析できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度用いた手法を元にAhRノックアウトマウスを用いた解析を検討する。これにより、AhR刺激による上記の検討結果が直接AhRを介した作用であることを証明できると考える。 また、現時点でTregの増加が線維化病態の改善に寄与すると考察しているが、既報においてTregが線維化に果たす役割について相反する結果が報告されておりよくわかっていない。そこで、Foxp3-DTRマウスを用いてTregを除去した状態でのブレオマイシン誘導肺線維症モデルの作成を検討する。
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Causes of Carryover |
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果である。
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