2019 Fiscal Year Research-status Report
黄色ぶどう球菌毒素は経皮感作による食物アレルギーに関与するか。
Project/Area Number |
19K17895
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
内田 志野 順天堂大学, 医学部, 助教 (30838438)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 食物アレルギー / 経皮感作 / 黄色ブドウ球菌毒素 / マスト細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
黄色ブドウ球菌毒素のdelta-toxin が経皮感作を増強して食物アレルギーを強く誘導するかどうかを明らかにするために次のような実験を行った。野生型マウスの皮膚をtape-strippingした後、(オボアルブミン)OVAのみ、あるいは、OVA + delta-toxin を2週間塗布し、その2週間後からOVAを隔日で計6回経胃管投与した。その結果、OVAのみを塗布した場合と比較してdelta-toxinが存在する場合には下痢の出現が早くその程度も激しかった。また、delta-toxinとともにOVAを塗布されたマウスではOVA最終投与後の血清総IgE値・OVA特異的IgE値・MCPT-1(粘膜型マスト細胞の活性化マーカーとなるプロテアーゼ)値がいずれもより高値を示した。OVA最終投与後のマウスの空腸を組織染色した結果、delta-toxinの存在により空腸のマスト細胞数は有意に増加することが判明した。また、感作時のdelta-toxin存在は、OVA最終投与後のマウスから採取した腸間膜リンパ節をOVAで再刺激したときに産生されるTh2サイトカイン量を増加させた。一方、OVA投与前のマウスの解析からdelta-toxinの存在がすでに血清総IgE値・OVA特異的IgE値・空腸マスト細胞数を増加させる傾向を示すことも判明した。これらの結果から、delta-toxinとともに皮膚感作された場合、抗原感作及び経口摂取による食物アレルギーの発症を強く促進することが明らかになった。delta-toxinは骨髄由来マスト細胞を活性化して脱顆粒させることを確認したが、他の免疫細胞に対する作用は解析中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスの皮膚をtape-strippingしたのちOVAを塗布し、その後OVAを経胃管投与することにより食物アレルギーを誘導することができた。つまり、経皮感作による食物アレルギーモデルを確立することができた。さらに、OVA塗布時にdelta-toxinを併用することで食物アレルギー症状が増悪することを明らかにすることができた。本年度内に、マウスモデルを利用して当初の仮説「黄色ブドウ球菌毒素delta-toxin が経皮感作を増強して食物アレルギーを強く誘導する」を立証することができたので、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
経皮感作時にdelta-toxinが存在すると、抗原感作及び抗原投与による食物アレルギーが増悪することは示されたが、その分子メカニズムは不明のままである。今後、マスト細胞・好酸球・好中球・好塩基球・ILC2などを特異的に除去したマウス(遺伝子改変マウスや特異的除去抗体を利用)を解析する。また、上皮細胞の産生するTh2誘導サイトカイン(IL-33・TSLP・IL-25)の関与を調べるために、適宜、遺伝子改変マウスや阻害抗体などを利用する。これらの結果から、delta-toxinがどの細胞に作用して食物アレルギーを増悪させるのかを明らかにする予定である。また、各細胞におけるdelta-toxin受容体を同定する予定である。
|
Causes of Carryover |
マウスモデルを解析するために必要な消耗品を効率よく使用できたので、一部を翌年度分として請求した。本年度、経皮delta-toxinによる食物アレルギー悪化の機序を解明するために必要な消耗品を購入する予定である。
|
Research Products
(4 results)
-
-
[Journal Article] CD300f is a potential therapeutic target for the treatment of food allerg2020
Author(s)
Uchida S, Izawa K, Ando T, Yamada H, Uchida K, Negishi N, Kaitani A, Maehara A, Nagamine M, Kamei A, Takamori A, Maeda K, Nakano N, Shimizu T, Ogawa H, Okumura K, Nagahara A, Watanabe S, Kitaura J
-
Journal Title
Allergy
Volume: 75
Pages: 471-474
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
[Journal Article] Differential lipid recognition by mouse versus human CD300f, inhibiting passive cutaneous anaphylaxis, depends on a single amino acid substitution in its immunoglobulin-like domain2020
Author(s)
Izawa K, Kaitani A, Ando T, Maehara A, Nagamine M, Yamada H, Ando T, Ide T, Matsuzawa M, Okamoto Y, Yin E, Fukase S, Wang H, Kamei A, Uchida S, Keiko M, Nakano N, Uchida K, Tamura N, Ikeda K, Ebihara N, Shimizu T, Voehringer D, Roers A, Ogawa H, Okumura K, Kitaura J
-
Journal Title
J Invest Dermatol
Volume: 140
Pages: 710-713
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-
[Presentation] An inhibitory receptor CD300f inhibits the pathogenesis of OVA-induced food allergy in mice2019
Author(s)
Anna Kamei, Shino Uchida, Hiromichi Yamada, Kumi Izawa, Tomoaki Ando, Naoko Negishi, Akie Maehara, Ayako Kaitani, Yoko Okamoto, Nobuhiro Nakano, Ko Okumura, Jiro Kitaura
Organizer
第48回日本免疫学会