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2019 Fiscal Year Research-status Report

肺高血圧症・強皮症の血管障害における、Rhoキナーゼ、BMP9/10の相互作用

Research Project

Project/Area Number 19K17903
Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

遠山 哲夫  東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30757513)

Project Period (FY) 2019-04-01 – 2021-03-31
KeywordsGATA6 / BMPR2 / BMP10 / SOD2 / GPX1
Outline of Annual Research Achievements

肺動脈性肺高血圧は進行性の肺血管抵抗の増加とそれによる右心不全を引き起こす比較的予後不良の疾患である。本研究において、転写因子GATA6の欠損により管内皮細胞と血管平滑筋細胞の細胞増殖、血管リモデリングの異常が引き起こされ、マウスモデルにおいて肺高血圧を呈することを示した。ヒトにおける肺動脈性肺高血圧においても同様の機序が関与していることが示唆された。またGATA6はSOD2やGPX1などの抗酸化タンパク質の発現を直接制御しており、GATA6の欠損による抗酸化タンパク質の発現低下により、酸化ストレスやミトコンドリア機能不全が引き起こされていることが示された。GATA6はBMP10/BMP受容体pathwayにより制御されているが、GATA6自体もBMP受容体の発現を制御することで、ポジティブフィードバックを形成していることが明らかになった。実際に、GATA6をノックダウンした肺動脈血管内皮細胞において、BMPR2やエンドグリン、AlK1といったBMP受容体を構成する要素の発現の低下がみられた。血管内皮特異的GATA6欠失マウスにおいても、同様の結果が得られた。また本研究で血管内皮細胞におけるGATA6欠損が血管平滑筋におけるGATA6の発現低下を引き起こすことが示され、血管内皮細胞と血管平滑筋細胞の細胞間相互作用が、肺高血圧の病態形成に重要であることが示唆された。多発性硬化症の治療薬として、安全性が担保されているフマル酸ジメチルは、酸化ストレスを軽減し、BMP受容体の発現を上昇させることで、血管内皮細胞や血管平滑筋細胞の異常増殖を抑制し、アポトーシスを誘導し、血管内皮細胞特異的GATA6欠失マウスの肺高血圧を改善する効果を有することが示された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

Boston University のMaria Trojanowska教授とUniversity of PittsburghのRobert Lafyatis教授との共同研究により、ヒトの肺高血圧症患者の組織や検体を使用でき、また血管平滑筋の研究を効率的に進めることができた。

Strategy for Future Research Activity

肺血管内皮細胞において、BMPR2はBMP9/10の受容体の主要な構成要素であるが、申請者らはこの受容体の他の構成要素であるActRIIB, エンドグリン、Alk1もそれぞれ、転写因子GATA6の発現に大きく影響していることを示した。このことから、BMPR2の機能を失活させることは他の構成要素の活動をnegative feedback的に亢進させる可能性が懸念される。本研究において、申請者らは主にBMPR2、ActRIIBの両者を欠失させることが、肺血管内皮細胞に与える影響をより大きくできると考えている。また、これまでの研究により申請者は、全身性強皮症患者において、BMP10の発現が低下しており、RVSPと負の相関を示すことを示している。全身性強皮症患者の多くが、無症候性であっても心臓の線維化を伴っていることが知られており、心臓から分泌されるタンパクの発現も変化していることが予想され、それと一致する結果であった。BMP10は血管内皮細胞の恒常性を担保する重要なタンパク質であるため、この発現量低下がPAH発症のpredispositionとして働いているのではないかと考えている。ラットなどのPHモデルにおいて低酸素刺激が重要な誘導因子であることが知られているが、その機序は未知の部分が多い。今までの研究において、低酸素処理したマウスの肺においてGATA6の発現の低下がみられたが、BMPR, ActRIIB, エンドグリンは発現量が上昇する傾向にあった。このことより、リガンドであるBMP10の発現の低下が予想された。右房におけるBMP10のmRNAレベルは低酸素処理で低下していることが示された。上記予備実験の再現可能性を確認するとともに、タンパク質レベルでの証明をしていく予定である

Causes of Carryover

研究代表者の異動に伴い、実験を一時中断しなければならなかったことによる。今後の計画は以下の通りとなる。①強皮症モデルマウスを用いた肺動脈性肺高血圧症をはじめとする血管障害の病態の解析、②血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、pericyte、免疫細胞の肺動脈性肺高血圧の発症における関与の解析、③免疫細胞の関与を解析するために、T細胞、B細胞、マクロファージにおける肺動脈性肺高血圧の病態への関与の検討。またBMPシグナリング、GATA6の発現低下がこれらの細胞の機能に及ぼす影響の検討。各種炎症性サイトカインの産生の変化、自己抗体産生を解析。④全身性強皮症の肺動脈性肺高血圧でみられる転写因子機能異常、シグナル伝達異常の関与、低酸素応答、ROS産生の変化を分子レベルで解明する。

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Published: 2021-01-27  

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