2020 Fiscal Year Research-status Report
肺高血圧症・強皮症の血管障害における、Rhoキナーゼ、BMP9/10の相互作用
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19K17903
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
遠山 哲夫 国際医療福祉大学, 国際医療福祉大学成田病院, 講師 (30757513)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | GATA6 / BMP10 / BMPR2 / ActRIIB |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究において、転写因子GATA6の欠損により、マウスモデルにおいて肺高血圧を呈することを示した。GATA6はSOD2やGPX1などの抗酸化タンパク質の遺伝子のプライマーに直接結合し、発現を制御していることを明らかにした。GATA6の欠損による抗酸化タンパク質の発現低下により、SODやGPX、カタラーゼの活性が下がり、酸化ストレスが引き起こされていることが明らかになった。またGATA6の欠損によりミトコンドリアのATP産生やプロトンリークが低下するなど機能不全が引き起こされていることによって、ミトコンドリア由来のROSが増加することも示された。特発性肺動脈性高血圧症患者の肺では、血管内皮細胞とともに血管平滑筋細胞のGATA6の発現が低下しており、それに伴いSOD2を始めとする抗酸化タンパク質の発現も低下しており、そのため酸化ストレスが異常亢進していることが示された。さらにGATA6は血管平滑筋細胞において増殖の抑制とアポトーシス誘導を促していることが示された。特発性肺動脈性高血圧症患者由来の血管平滑筋細胞において、細胞増殖を促すPRPF4が増加し、細胞増殖を負に制御するSTINGの発現が低下していることがわかった。 GATA6はBMP10により発現が誘導されることを示したが、それがBMPR2、ALK1, エンドグリンにより構成される受容体を経由して制御されていることを示した。逆にGATA6の欠損によりBMPR2、ALK1、エンドグリンの発現が低下することを明らかにした。また本研究でマウスにおける血管内皮細胞におけるGATA6欠損が血管平滑筋におけるGATA6の発現低下を引き起こすことが示された。血管内皮細胞と血管平滑筋細胞の相互作用は、液性因子によって引き起こされることが示された。血管平滑筋細胞のBMPR2の発現低下、SOD2など抗酸化タンパク質の発現低下も伴っていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
申請者の異動に伴い、実験室を1から立ち上げる必要があった。現時点ではおおむね予定どおりの実験ができるところまでセットアップが進んでおり、実験を再開できている。
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Strategy for Future Research Activity |
肺血管内皮細胞において、BMPR2はBMP9/10の受容体の主要な構成要素であるが、申請者らはこの受容体の他の構成要素であるActRIIB, エンドグリン、Alk1もそれぞれ、転写因子GATA6の発現に大きく影響していることを示した。このことから、BMPR2の機能を失活させることは他の構成要素の活動をnegative feedback的に亢進させる可能性が懸念される。BMPR2と血管内皮機能の異常は数多く報告されているが、ActRIIBについては報告が乏しい。本研究において、申請者らはActRIIBはBMPR2を補完する可能性があり、BMPR2、ActRIIBの両者を欠失させることが、肺血管内皮細胞に与える影響をより大きくできると考えている。この仮説のもとinvivofectamineを使用することで、両者をノックダウンさせたマウスを低酸素下で飼育したときの、肺高血圧の発現について解析することを計画している。 予備実験において、右房におけるBMP10のmRNAレベルは低酸素処理で低下していることが示された。また免疫染色によってタンパク質レベルでもその裏付けが取れた。In vitroではBMP10存在下で、BMPR2, ActRIIB, エンドグリン、Alk1の低下が見られたが、低酸素処理したマウスの肺においてGATA6の発現の低下がみられたが、BMPR2, ActRIIB, エンドグリン、Alk1は発現量が上昇する傾向にあった。このことよりBMP10による刺激がBMPR2, ActRIIB, エンドグリン、Alk1の発現を制御しているのではないかと予想している。このことを検討していく。
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Causes of Carryover |
前年度は申請者の異動があり、実験室の立ち上げから行う必要があり、本研究を遂行することが困難であった。そのため、研究の多くが遅延することになった。 現時点ではセットアップがほぼ完了し、実験が再開できている。以下の使用計画のもと実験を遂行中である。 invivofectamineを使用することで、両者をノックダウンさせたマウスを低酸素下で飼育したときの、肺高血圧の発現について解析する。BMP10による刺激がBMPR2, ActRIIB, エンドグリン、Alk1の発現をどのように変化させるのかを検討する。BMP9とBMP10が血管内皮細胞に対して遺伝子発現にどのような差を生じるのかRNA-seqにより解析する
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Research Products
(1 results)