2020 Fiscal Year Research-status Report
The exploration of therapeutic target molecules for Sjogrens syndrome focusing on B cell subsets
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19K17916
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
武井 江梨子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (40594643)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | シェーグレン症候群 / B細胞 / 自己抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は指定難病であるシェーグレン症候群(SS)の病態の中心を担うB細胞の亜群であるCD38highIgD+B 細胞に焦点をおいて、この細胞群が病態に寄与する機構の詳細を明らかにし、新規の治療標的を探索することを目的としている。SSの病態には何らかの理由によりB細胞が活性化し、自己抗体産生などの機能異常が強く関与していると考えられている。実際にSS患者では、免疫グロブリン、抗SSA/SSB抗体などの自己抗体やB細胞活性化因子であるBAFFの末梢血中濃度が高く、疾患活動性とも創刊することから、B細胞の機能亢進の分子機構を明らかにすることは治療標的の発見につながり、根治療法の開発を可能にする。これまでの成果から、SS患者でのCD38highIgD+B 細胞群について、末梢血中のこの細胞群の割合と疾患活動性や血中の自己抗体価上昇など特徴的な病態と有意な相関があること、この細胞群でのBAFFやIL-6などの受容体の発現が高いこと、患者末梢血B細胞は健常人細胞と比較して刺激に対する反応性が異なり、IgG産生量も有意に高値であることが明らかになった。本年度はこれらに加え、以下の知見を得ることに成功した。1)患者末梢血B細胞に対して、BAFFを含めた刺激を加えた場合、CD38highIgD+B 細胞群の減少と形質芽細胞と形質細胞の割合が増加する、2)刺激を受けた患者末梢血B細胞ではBAFF受容体を介したシグナル分子やクラススイッチに関わる分子の発現亢進が認められる、3)自己抗体産生モデルマウスの脾臓リンパ球ではCD38highIgD+細胞の割合が病態の進行に伴い減少し、形質細胞の割合と血清中自己抗体価が上昇する。これらの結果より、CD38highIgD+B 細胞群は抗体産生能を有するplasmablastや形質細胞の前駆細胞であり、自己抗体産生に寄与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において、本年度ではCD38highIgD+B 細胞の機能について in vitroでの患者細胞の刺激培養やモデルマウスを用いて細胞の分化やそれに関わる分子発現など詳細な検討を加え、SSの特徴的病態であるIgG産生亢進へのCD38highIgD+B 細胞の関与を検証することを目標と定めている。 以下に成果の詳細を記載する。1)SS患者末梢血単核球(PBMC)に対して抗IgM抗体、抗CD40抗体、BAFF、IL-21を用いて刺激培養した結果、CD38highIgD+B 細胞の割合の減少とCD38+IgD-(形質芽細胞+形質細胞)の割合の上昇を認めた。これに伴いIgG産生量の増加を認め、この傾向は健常人細胞と比較して顕著に高値であった。2)SS患者PBMCに対してB細胞に特化した刺激を加えた場合、無刺激と比較して Activation-induced cytidine deaminase(AICDA)、IKKアルファーおよびベータ、NF-kB1およびB2の発現上昇が認められた。3)自己抗体産生モデルマウスであるMRL/lprマウスの脾臓リンパ球では病態の進行に伴い顕著な血清中自己抗体価の上昇とCD38highIgD+B 細胞の割合の低下、形質細胞の増加を確認した。これに対して免疫抑制剤であるシクロフォスファミドを投与した場合、自己抗体産生の顕著な抑制とCD38highIgD+B 細胞、形質細胞の増加減少が認められた。これらの結果からCD38highIgD+B 細胞はIgG産生能を有するplasmablastや形質細胞へ分化する前駆細胞であり病態の中心となる細胞群である可能性が示された。以上より本年度の本研究は計画通り進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では第1年次および2年次で患者末梢血細胞と自己抗体産生モデルマウスを用いて、CD38highIgD+B 細胞が抗体産生細胞であるplasmablastや形質細胞の前駆細胞の役割を果たしている可能性を見出し、SSの治療標的細胞としての有用性を検証した。次年度はこれらの結果を踏まえ、健常人および患者末梢血細胞を用いてCD38highIgD+B 細胞での遺伝子およびタンパク質の発現変動を網羅的に解析する。さらにCD38highIgD+B 細胞の特徴に一つであるCD38分子の高発現に着目し、ヒトB細胞由来細胞株Ramosを用いて、CD38分子のsiRNAを導入し、細胞増殖、抗体産生機能に対する影響を検討する。また抗体産生モデルであるMRL/lprマウスに対して、CD38に対するモノクローナル抗体を投与し、病態改善効果を検証する。具体的には血清中自己抗体価の上昇に対する効果、涙腺、顎下腺など組織における炎症抑制作用を検証する。さらにマウスの病勢に伴うCD38highIgD+B 細胞の機能について、脾臓リンパ球を用いた当該細胞の存在比や刺激によるIgG産生能、B細胞の活性化に関連する分子の発現などを指標にCD38分子を抑制した場合の効果を検討する。
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Causes of Carryover |
第1年次および2年次において当該細胞の機能や病態への関与が明らかになったため、第3年次で動物モデルを用いた検討を拡大して実施する計画とし、その解析費用の一部を第3年次へと持ち越した。
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