2019 Fiscal Year Research-status Report
B細胞制御機構と自己免疫疾患発症におけるヒストン脱メチル化酵素UTXの役割
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19K17918
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
世良 康如 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (40836532)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | UTX / エピジェネティクス / 自己免疫疾患 / B細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒストン脱メチル化酵素UTXは、メチル化されたヒストンH3の27番目のリジン残基を脱メチル化するエピジェネティック因子である。UTXに先天的な機能欠失型変異を有する歌舞伎症候群の患者は、高頻度に自己免疫疾患を発症するが、その発症機構は明らかでなく、免疫細胞におけるUTXの機能欠失が自己免疫疾患発症に寄与することが予想された。 本申請では、申請者らの作製したB細胞特異的UTXコンディショナルノックアウトマウスの経時観察を行ったが、これまでのところ自己免疫疾患の自然発症は認められていない。血清中の各クラスの抗体量を測定した所、一部のクラスで抗体量の上昇が認められた。また造血器におけるB細胞系列の各分化段階を検討した結果、骨髄ではネガティブセレクション過程である未熟B細胞が増加しており、脾臓や腹腔内では自己免疫疾患への寄与が報告されている辺縁帯B細胞などのB細胞分画がの増加が認められた。この増加したB細胞分画には、通常は観察される表面抗原マーカーの消失などが認められ、分化および機能異常が推察された。さらに、ROSA/ERT2Creマウスと掛け合わせた全身性UTX欠失マウスの造血幹細胞分画を用いたトランスクリプトーム解析の結果からは、B細胞分化に関わるシグナル経路の遺伝子の発現低下が認められた。これらの結果から、UTX欠失によるB細胞の分化および機能異常が自己免疫疾患発症の一助となる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
UTX欠失によるエピジェネティックな発現制御機構の破綻が、B細胞の分化および機能異常を誘導し、自己免疫疾患発症の一因となる可能性が示された。引き続きB細胞における機能異常を解析するとともに、UTXによる発現制御の標的遺伝子の同定に取り組んでいく。おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
我々の作製したB細胞特異的UTX欠失マウスのこれまでの観察では、自己免疫疾患の自然発症は観察されていない。そこでプリスタンなどの薬剤によって自己免疫疾患発症を誘導し、B細胞におけるUTX欠失の自己免疫疾患発症に対する影響を検証する。また、次世代シーケンサーによる網羅的解析やクロマチン免疫沈降法組み合わせて、分化異常の原因となる、UTXの標的遺伝子の探索を計画している。
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Research Products
(1 results)