2019 Fiscal Year Research-status Report
ハイリスク状態におけるクリプトコックスに対する易感染性の免疫機序の解明
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19K17920
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 光 東北大学, 医学系研究科, 助教 (20832124)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | クリプトコックス / 感染免疫 / 糖尿病 / ステロイド |
Outline of Annual Research Achievements |
クリプトコックスは経気道に肺へと感染する酵母型真菌であり、感染防御にはTh1型の免疫応答が重要である。クリプトコックス症のリスク因子として、糖尿病 (DM)、長期ステロイド投与などが知られているが、それらが直接的に免疫応答に与える影響については不明な点が多い。そこで本研究では、DM及びステロイド投与がクリプトコックスの感染防御に与える影響について解析を行った。 デキサメタゾン (Dex) 存在下ではマウス骨髄細胞から樹状細胞への分化が阻害された。Dex存在下ではマウスマクロファージ細胞株MH-Sが多核巨細胞化し、LPS刺激によるNO産生が亢進した。一方で、2か月間にわたって高グルコース環境 (HG)、Dex存在下で培養したMH-SではNO産生が低下した。クリプトコックス抗原特異的なT細胞受容体を高発現するトランスジェニックマウス (CnT-II) にストレプトゾトシン (STZ) を投与することによって作製したDMマウスモデルでは、血糖値が上昇した時点での脾細胞をクリプトコックス抗原で刺激することで産生されたIFN-γはコントロールマウスと比べ亢進したのに対し、血糖値上昇後1か月間飼育したDMマウスでは、その産生は低下した。Dexを投与したCnT-IIマウスの脾細胞をクリプトコック抗原で刺激することで産生されたIFN-γはコントロールマウスと同程度であったのに対し、脾細胞をDex存在下で刺激することで産生されたIFN-γは消失した。野生型マウスにSTZと投与することで作製したDMマウスでは、クリプトコックス感染後の肺での生菌数は増加し、Dex投与マウスでは低下した。 以上の結果より、DMでは急性期と慢性期で免疫応答へ与える影響が異なり、急性期ではTh1応答が亢進し、慢性期では低下する可能性が示唆された。またDexはTh1応答を抑制することで感染を悪化させる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
in vivo、in vitroの実験を並行して行い、CnT-IIマウスを用いることで、クリプトコックス特異的な免疫応答へのDMやDexの影響について解析し、興味深い結果が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に得られた知見をもとに、クリプトコックス感染防御における、糖尿病、ステロイドの影響についてさらに詳細な解析を実施し、ハイリスク状態におけるクリプトコックに対する易感染機序を解明し、クリプトコックス症の発症予防法の開発につなげる。
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Causes of Carryover |
平成29年度の実験を効率よく実施することが出来たが、約5万円の未使用額が生じた。 平成30年度に未使用額も含め、研究費として使用する予定である
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