2019 Fiscal Year Research-status Report
Th17を介した生体成分由来の経口アジュバントの感染防御IgA誘導機序の解明
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19K17926
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
木本 貴士 徳島大学, 先端酵素学研究所(デザイン), 特任研究員 (90724261)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 経口ワクチン / 肺サーファクタント / インフルエンザ / 腸管免疫 / Th17 / Treg |
Outline of Annual Research Achievements |
現在臨床で用いられているインフルエンザワクチン (HAv) は皮下投与型ワクチンであり、これは血液IgGによる肺炎等の重症化予防には有効であるが、実際にウイルスが感染、増殖する気道粘膜のIgAを誘導しないため感染防御効果はほとんどない。この問題を解決するために、申請者らは粘膜IgAを誘導できる粘膜投与HAvの開発研究に着手した。その結果、当研究室が開発した肺サーファクタント由来粘膜アジュバントSF-10とHAvを混合した経口投与ワクチンが強い粘膜IgAを誘導できることを見出した。本研究ではその作用機序解析の一環として、粘膜IgA誘導に関与することが報告されているTh17と制御性T細胞 (Treg) がSF-10のIgA誘導メカニズムに関与するかを明らかにすることを目的としている。 まずTregに着目した研究として、SF-10混合HAv (HAv-SF-10) を経口投与したマウスの脾臓細胞中のTreg存在比率をFlow cytometerで解析した結果、non treatマウスやHAv皮下投与マウスと比較して高いTregが確認された。次にTreg枯渇抗体であるanti-CD25抗体をマウスへ腹腔内投与した後、HAv-SF-10を経口投与したところ、肺洗浄中のHAv特異的IgA抗体が、対照群としてisotype controlを腹腔内投与したマウスと比較して減少することが確認された。またこの時血清中のHAv特異的IgG抗体はanti-CD25抗体投与マウスの方が増加する傾向が見られた。次にTh17に着目した研究としてTh17のマスター転写因子であるRORγtの阻害剤を用いた試験を行った。現在Th17阻害の条件検討としてRORγt阻害剤であるDigoxinやSR2211をマウス腹腔内投与し、Th17誘導阻害効果を検討している最中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
TregやTh17をマウス個体において枯渇あるいは阻害する試験系の確立に時間がかかっている。Treg枯渇に関しては、現在行っているanti-CD25抗体腹腔内投与での枯渇効果は40%程度であり、さらに抗体の投与スケジュールや投与量を検討する必要がある。しかしながら、枯渇効果が完全ではないがIgA抗体減少には一定の効果を示すことから、より最適な枯渇抗体投与法を確立すると同時に、現在の条件でHAv-SF-10経口投与のIgA産生メカニズム解析を進める予定である。また本試験において、HAv-SF-10経口投与は粘膜IgA抗体誘導効果はもとより、血液IgG抗体誘導がHAv皮下投与と比較して50倍以上高いことが分かった。これはHAv-SF-10経口投与により誘導されたIgAの感染防御効果の寄与を検討する上で、IgG抗体の効果も強く影響することを意味する。この問題を解決するために致死量インフルエンザウイルス感染による生存率の検証以外にも、粘膜IgAの効果がより支配的な感染後の肺のウイルス残存量や炎症性サイトカインの誘導等も指標に今後解析を行う。また別の解決法として対照群であるHAv皮下投与と同程度の血液IgG抗体誘導下における粘膜IgAの優位性を確認するために、HAv皮下投与の投与抗原量の1/10程度に抗原量を低下させたHAv-SF-10を経口投与したマウスの感染実験等も今後行う。
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Strategy for Future Research Activity |
1) Treg枯渇状態におけるHAv-SF-10経口投与ワクチンの感染防御能について、致死量インフルエンザウイルス感染後の致死率だけでなく、ウイルス中和能や炎症性サイトカインを指標に評価する。
2) 現在観測しているTregやTh17はHAv特異的な細胞ではないため、今後HAv特異的なTregやTh17の検出法を確立する。具体的には免疫したマウスの脾臓細胞を試験管内でHAvで刺激し、一定期間後にHAv刺激により増殖する細胞をCFSEあるいはKi67抗体で検出する。
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