2019 Fiscal Year Research-status Report
皮膚ポリオーマウイルスから判ずる宿主のオリジンおよび炎症性皮膚疾患との関連性
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19K17928
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
橋田 裕美子 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (00767999)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ウイルス / 皮膚 / 微生物 / DNA型 |
Outline of Annual Research Achievements |
人の皮膚微生物叢は様々な皮膚疾患に関与すると考えられるが、これまでの研究の多くは細菌種に焦点をあてたものであり、皮膚に常在するウイルス叢については不明な点が多い。本研究では、皮膚に生息する主なウイルスであるポリオーマウイルス科に焦点をあて、「ウイルスゲノム多型を利用した人類の新たな系統分類」と「ポリオーマウイルス群と炎症性皮膚疾患との関連性の探求」を行う。 皮膚常在ウイルスであるメルケル細胞ポリオーマウイルスは、小児期に無症候感染後、低ウイルス量で持続感染することから、宿主の育った地理/民族的環境を反映すると考えられる。本年度は、これまでに収集した皮膚スワブDNAを解析し、異なる民族・地理的起源をもつ健常者の皮膚スワブに含まれるメルケル細胞ポリオーマウイルスのゲノム配列の解析を行った。メルケル細胞ポリオーマウイルスのゲノム配列全長に対していくつかのプライマーセットを設計し、PCR法により増幅した。ダイレクトシークエンス法により配列を同定し、宿主の出身地域との配列との比較解析を行った。その結果、日本・東アジア地域由来の皮膚スワブからは、転写・複製調節に関与する非コード制御領域に特徴的な25塩基の反復配列を有するメルケル細胞ポリオーマウイルス株が検出されることが明らかとなった。反復配列の有無により、大きく2つの型に大別され、反復配列を有する株は主に日本・東アジア由来の皮膚スワブから検出され、反復配列の無い株はそれ以外の地域由来の皮膚スワブから検出された。さらに解析を行った結果、周辺領域のゲノム配列からさらに5つの遺伝子型に分類できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究により、皮膚スワブに含まれるメルケル細胞ポリオーマウイルスの特定ゲノム配列領域を解析することにより、簡便に宿主の民族・地理的起源を推定できる可能性が示唆された。今後の研究において重要な情報が得られたことから、研究は計画通りに進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は症例数を増やし、皮膚スワブ提供者の出身地域とゲノム型との相関性を解析し、特異性の証明を行う。さらに、識別マーカー領域とする配列領域の範囲により分類地域の細分化が可能であるか、マーカーとするウイルス種を増やすことにより精度の向上が可能か、皮膚検体の採取量とウイルスゲノムの検出限界との関連性について検討する。
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Causes of Carryover |
試薬を中心に物品費の支出を必要最低限に抑えて予算を執行したため、若干の繰越金が発生した。 次年度も引き続き遺伝子検出関連試薬、蛋白発現解析用試薬、プラスティック器具、細胞培養関連試薬などの物品費を中心に予算を計上する。また必要に応じ備品購入に充てる。
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