2019 Fiscal Year Research-status Report
上皮細胞の機能調節を介した肺炎マイコプラズマの持続感染機構の解析
Project/Area Number |
19K17944
|
Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
山本 武司 久留米大学, 医学部, 講師 (20632566)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | Mycoplasma pneumoniae / 持続感染 / PARP1 / 過酸化水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺炎マイコプラズマが実際に過酸化水素による感染上皮細胞の剥離を抑制するかどうかを調べるため、ヒト気道上皮細胞株であるBEAS-2Bに肺炎マイコプラズマを異なる感染価で感染させ、過酸化水素を作用させた際の細胞の剥離の程度をクリスタルバイオレット法を用いて解析した。その結果、肺炎マイコプラズマの感染菌数依存的に細胞の剥離の程度が低下することが分かった。この過酸化水素誘導性の細胞の剥離はPARP1依存的に起きており、poly(ADP-ribose)の形成を伴うが、肺炎マイコプラズマの感染はこの過酸化水素誘導性のpoly(ADP-ribose)の形成に対しても抑制効果を示した。このことから肺炎マイコプラズマはPARP1の活性を制御することで、感染上皮細胞の剥離を抑制し感染を維持するのではないかということが予想された。そこでこの活性制御メカニズムの詳細を明らかにするため、PARP1の翻訳後修飾に着目し、過酸化水素にて刺激した肺炎マイコプラズマ感染/非感染細胞からPARP1を免疫沈降にて回収し、ユビキチン化抗体、アセチル化リジン抗体および各種リン酸化抗体を用いてPARP1のユビキチン化、アセチル化およびリン酸化の傾向について解析を行った。しかしながらこれらの翻訳後修飾に目立った違いは認められなかった。このことから肺炎マイコプラズマによるPARP1活性の制御には既知の翻訳後修飾は関与しておらず、それ以外のメカニズムが関与していることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進捗状況はおおむね当初の予定通りであり、問題なく研究計画を遂行できていると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
肺炎マイコプラズマによるPARP1活性の制御に既知の翻訳後修飾の関与が認められなかったことから、2020年度はまず肺炎マイコプラズマ感染が実際にPARP1の活性それ自体を低下させるのかどうかを明確にするため、感染細胞からPARP1を抽出し、in vitroにて活性評価を行う。さらに肺炎マイコプラズマ側の因子を明らかにするため、既存の病原因子欠損株によるPARP1活性抑制効果について評価を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
2019年度は遺伝子導入装置と関連の消耗品の購入に130万円を使用する予定であったが、機器の選定の結果、予定よりも安価な機器を購入することになったため、約80万円の余剰金が生じた。また、試薬・キット類に関しても既存のもので必要な実験を行うことができたため、予定していた消耗品の購入を一部取りやめており、結果として約60万円の余剰金が生じた。これらについては2020年度以降に実施予定の研究に必要な物品の購入に充てる予定である。
|