2019 Fiscal Year Research-status Report
肝インスリンシグナルが脳レプチン作用に影響を与える新規臓器連関の解明
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19K17951
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 圭 東北大学, 医学系研究科, 助教 (00644808)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | インスリン作用低下 |
Outline of Annual Research Achievements |
個体の体重は種々の臓器間相互作用によって密に制御されている。生理的な状態では、過食により脂肪が蓄積すると、脂肪細胞からレプチンが分泌され、血流を介して脳(主に視床下部)に作用し、摂食抑制やエネルギー消費増大などをもたらし、体重増加に対して抑制的に働く(Cell Metab.2012;15:292)。一方、飢餓では脳へのレプチン作用が低下し、体重を増加させる方向の反応が進む。これらの系が十分に機能すれば、体重の恒常性は保たれるはずであるが、実際には過食の継続により肥満人口が爆発的に増加している。肥満者の大部分は高レプチン血症であるが、脳(視床下部)におけるレプチンの作用不全が生じている(レプチン抵抗性)ため、摂食が増加し、そのことでさらなる脂肪蓄積が生じ、肥満が一層増悪するという悪循環に陥っている(Cell Metab.2012;15:292)。実際、肥満状態の視床下部では、レプチンの下流のシグナル伝達が種々の段階で抑制されていることが知られているが、そのようなシグナル伝達抑制がなぜ肥満状態の脳で生じるのか、換言すれば、肥満の背景にある種々の異常のうち、どの異常が脳での変化を生じさせるのか、という最も本質的な疑問は解明されておらず、それゆえレプチン抵抗性を改善する治療法の創出には程遠い現状にある。 肥満では、上述したレプチン抵抗性のみならず、肝臓を含む種々の臓器でインスリン抵抗性が生じることが知られている。研究代表者は、誘導性に肝臓選択的にインスリン受容体をノックアウトさせたマウスを独自に作製したところ、このマウスはノックアウト後に体重が増加するという予想外の表現型を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
エネルギー消費の主要な手段は褐色脂肪組織における熱産生および自発運動による骨格筋収縮であることから、これらを評価した。①褐色脂肪組織の熱産生関連分子の遺伝子発現を、定量PCRを用いて解析した。②褐色脂肪組織ノルエピネフリン含量は褐色脂肪組織を支配する交感神経の活性を反映することから、これを測定した。③研究室で有する小動物運動量測定装置を用い自発運動量を測定した。④レーザーマイクロダイセクション法を用いて視床下部弓状核を選択的に採取し、レプチン作用を媒介するニューロペプチドの発現を定量PCRで解析した。⑤肝臓から精製したRNAを用いてマイクロアレイにてスクリーニングを行い、発現量や分泌シグナル配列の有無からヘパトカインたりうる候補分子を抽出し、以下の方法でさらに絞り込んだ。⑥初代肝細胞培養を行い、候補分子が培養液中に分泌されるかを質量分析法で検討した。⑦アデノウイルスベクターを用いて候補分子に対するshRNAを肝臓に導入した。候補分子をノックダウンすることが体重増加や摂食亢進をどの程度抑制するかを比較検討し、候補分子の絞込みを行なった。⑧この分子をCre依存的に肝臓で欠損させたマウスを作成し、体重や摂食への影響など、この分子の生理的な意義について検討した。続いて、この分子を肝臓で欠損させたマウス(ダブルKOマウス)も作製し、表現型にどのような影響を及ぼすかなど、この分子の肥満における意義についても検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
⑤で見いだした肝からの分泌因子が肥満や飢餓の状態で実際に分泌が亢進しているか、さらには⑧のKOマウスの高脂肪食や絶食での表現型を検討し、新規臓器間・シグナル間(「肝臓インスリンシグナル」―「視床下部レプチンシグナル」)連関の生理的・病態生理的意義を解明する。
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Research Products
(3 results)