2019 Fiscal Year Research-status Report
時計遺伝子に着目した機能性下垂体腫瘍の薬物制御とその機序の解析
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19K17985
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
小松原 基志 岡山大学, 大学病院, 医員 (80794338)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | オレキシン / 下垂体 / BMP |
Outline of Annual Research Achievements |
日内変動をもつホルモンを過剰産生する下垂体腫瘍では「分泌リズムの異常・フィードバック機構の破綻」を必ず伴う。本研究は下垂体腫瘍細胞における分泌リズムの異常をきたすメカニズムおよび概日リズムと薬剤作用機序との関連を明らかにすることで、有効な下垂体腫瘍に対する内科的治療の開発を目指すことを目的としている。初年度の研究では、中枢神経系で睡眠覚醒や摂食行動などを調節するオレキシンを用い、BMP-4によるACTH合成調節への影響に着目して下垂体ホルモン制御の可能性を模索した。マウスコルチコトロープ細胞AtT20において、Orexin 2 受容体発現を認めた。CRH刺激下・非刺激下でのACTHの前駆体であるPOMC転写に対するOrexin Aによる影響を検討したところ、CRH刺激下ではPOMC mRNA発現を増強する傾向を認めた。またPOMC転写抑制に働くBMP-4との相互作用を検討したところ、Orexin AはBMP-Smadシグナルを減弱した。これらの結果からオレキシンはコルチコトロープ細胞においてBMP-Smadシグナルの抑制によりPOMC発現・ACTH分泌を増強する可能性が示唆された。さらにオレキシンとBMP-Smadシグナルとの連関について検討を進めている。今後、概日リズム調節ホルモンであるオレキシン作用と治療薬であるソマトスタチンアナログの相互作用についても、これまで検討してきたメラトニン作用と比較して検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでも使用してきたマウスコルチコトロープ細胞AtT20におけるCRH刺激へのPOMC転写の反応が以前と異なることがあり、これまでの検討との整合性を検証するために時間を要した。しかし、問題は解決したため検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
発がんに細胞レベルでの概日リズムの異常が関与する可能性が報告されている。また視床下部においてはオレキシン、ソマトスタチンの機能的連関が報告されていることから、前年度の結果を踏まえ、 下垂体腫瘍細胞でのオレキシンと治療薬であるソマトスタチンアナログの相互作用についてBMP-4作用、時計遺伝子との関連に着目して検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画がやや遅れているために試薬などの消耗品の購入費が当初の予定より少なかった。またCOVID-19の影響で参加予定であったアメリカで開催される学会(ENDO 2020、サンフランシスコ)が中止となり参加ができなかったため学会参加費、旅費が大幅に減少した。 次年度はマウスコルチコトロープ細胞AtT20を用いて、in vitroでのオレキシンと治療薬であるソマトスタチンアナログの相互作用についてBMP-4作用、時計遺伝子との関連に着目して検討していく予定である。研究費は主に試薬(Orexin A、BMP-4、SOM、OCT)、リアルタイムPCR関連試薬、プライマー、ウエスタンブロット用の抗体など試薬類を購入する費用とする予定である。
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