2019 Fiscal Year Research-status Report
M2マクロファージの除去により、ベージュ化が亢進するメカニズムの解明
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19K18002
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
五十嵐 喜子 富山大学, 学術研究部医学系, 特命助教 (30837688)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ベージュ脂肪細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
私は、代謝を高め肥満の予防が期待できるベージュ脂肪細胞に着目し研究を行っている。一般的に「脂肪」と呼ばれる白色脂肪細胞はエネルギー蓄積型であるが、寒冷刺激後に現れるベージュ脂肪細胞はエネルギー燃焼型で基礎代謝を高める。一方、私どもの研究室では免疫と肥満の関係について研究を行っており、肥満の脂肪細胞で減少する、抗炎症性のM2マクロファージ(M2Mφ)を任意のタイミングで除去できる遺伝子改変マウス(CD206-DTRマウス)を用いて肥満とM2 Mφの関係の解明に取り組んできた。これまでに、M2 MφがTGFβを介して前駆脂肪細胞の増殖・分化を抑制し、M2 Mφ除去後の脂肪組織では、健全な小型の脂肪細胞が増加してインスリン抵抗性が改善することを明らかにした。そこで私は、M2 Mφ除去後のCD206-DTRマウスに寒冷刺激を施してベージュ化を促し、野生型に比べてベージュ前駆脂肪細胞の増殖が誘導され、ベージュ脂肪細胞が増加し、耐糖能・インスリン抵抗性の改善が起こることを明らかにした。 現在、このM2 Mφ除去によるベージュ化の促進メカニズムを明らかにすることをはじめ、寒冷刺激により増加するベージュ脂肪細胞の由来や、糖尿病状態の肥満マウスにおいてもM2 Mφ除去後に寒冷刺激を施すと効率的にベージュ脂肪細胞が増加し、抗肥満・抗糖尿病作用を呈するかを確認することを目的として研究を行っている。 昨年は、M2 Mφが欠損するとされているTrib1欠損マウスを作製し、高脂肪食を負荷して脂肪組織の遺伝子発現を確認した。その結果、作製したマウスにはM2 Mφが存在しており実験に使用出来なかった。そこで、M2 Mφを任意のタイミングで減少させることが可能なマウス(CD206CreERT2 × RosaCAG-LSL-p27マウス)を用意することとし、現在はRosaCAG-LSL-p27を作製している段階にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、予定していたTrib1欠損マウスでM2 Mφの欠損が確認できなかったため、M2 Mφを任意のタイミングで減少させることが可能なマウス(CD206CreERT2 × RosaCAG-LSL-p27マウス)を用意することにした点で、RosaCAG-LSL-p27マウスの作製に大幅な時間を割いた。また、自身の妊娠・出産のため、過度な負担のかかる動物実験を先送りにしており、復帰後に動物の用意を始めたため、当初の予定より遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
肥満マウスにおいてベージュ化が亢進し、耐糖能やインスリン抵抗性の改善がおこるかを、高脂肪食を負荷した肥満CD206-DTRマウスのM2 Mφを除去した後、96時間の寒冷刺激を施して体重や摂餌量を測定を行う。寒冷刺激終了後は、ブドウ糖負荷試験やインスリン負荷試験により耐糖能の改善を評価する。試験終了後は組織所見、免疫染色法、遺伝子発現量、フローサイトメトリーにより、ベージュ化の亢進を評価する。 また、M2 Mφ除去によるベージュ化の促進メカニズムを解明するため、M2 Mφをタモキシフェンの投与により任意のタイミングで増加させることが可能なマウス(CD206CreERT2 × p27f/fマウス)や、タモキシフェンの投与により任意のタイミングでM2 Mφを減少させることが可能なマウス(CD206CreERT2 × RosaCAG-LSL-p27マウス)を用意し、それぞれのマウスに高脂肪食を負荷して、96時間の寒冷刺激を施す。寒冷刺激を行う間、体重や摂餌量を測定し、試験終了後は組織所見、免疫染色法、遺伝子発現量、フローサイトメトリーにより、ベージュ化の亢進を評価していく。
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Causes of Carryover |
使用する予定であったマウスを次年度に使用することに変更したため。
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