2019 Fiscal Year Research-status Report
甲状腺ホルモン脱ヨード酵素を軸とした新たな疾患概念と治療法の探索
Project/Area Number |
19K18006
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂根 依利子 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (70781342)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 甲状腺ホルモン脱ヨード酵素 / 甲状腺機能低下症 / 化合物ライブラリー / ハイスループット / スクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
甲状腺ホルモン脱ヨード酵素には、1~3型(D1、D2、D3)があり、プロホルモンであるT4を活性型であるT3や不活性型であるreverseT3に代謝することにより甲状腺ホルモン作用の調節を行う重要な分子である。甲状腺機能低下症には長い半減期を有するT4製剤を単独で治療に用いるが、投与量を調節しても、甲状腺ホルモン作用不足が残存するというアンメット・ニーズがある。本研究では甲状腺ホルモン脱ヨード酵素の視点からこの問題に取り組み、新たな疾患概念の確立と治療法の基盤構築を目指す。 まず、既に臨床応用されている化合物ライブラリーのスクリーニングを行った。プロモーターアッセイを応用して我々が新たに構築したアッセイ系により、一次スクリーニングを行ったところ、正に制御する候補化合物(D1:26個、D2:63個、D3:30個)、負に制御する候補化合物(D1:75個、D2:47個、D3:24個)が得られた。プロモーター特異性・再現性の確認と、細胞毒性の除外を行うために二次スクリーニングを実施した。最終的に、正に制御するヒット化合物(D1:6個、D2:34個、D3:5個)と負に制御するヒット化合物(D1:5個、D2:5個、D3:2個)を確定した。 次いでこれらのヒット化合物が生体へ有意な影響を及ぼすかを検証するため、当院の甲状腺機能低下症の患者データを用いて、ヒット化合物の内服前後における甲状腺機能の変化を評価した。複数のクラスの化合物について有意な変化を検出することができた。この変化が甲状腺ホルモン脱ヨード酵素の発現変化によるものか確認するため、ヒット化合物のマウスへの投与実験を行い、表現型の解析を予定している。 すなわち、この領域で初となるハイスループットスクリーニングを実施し、臨床研究での検証を組み合わせることにより、上記の目的の達成に向け研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
化合物ライブラリーのハイスループットスクリーニングについて、予定していたD1、D2、D3の3種とも一連の実験を終了し、最終的なヒット化合物(正に制御:D1 6個、D2 34個、D3 5個、負に制御:D1 5個、D2 5個、D3 2個)を確定した。 続いてこれらのヒット化合物が生体へ有意な影響を及ぼすか検証するため、当院の甲状腺機能低下症患者を対象にレトロスペクティブコホート研究を実施し、ヒット化合物の内服前後における甲状腺機能の変化を検討した。一連のデータ収集を終え、複数のクラスの化合物については有意な変化を検出することができた。データの再確認と統計学的な検証を進めている。 化合物スクリーニングおよびコホート研究において見られた変化が甲状腺ホルモン脱ヨード酵素の発現変化によるものか確認するため、ヒット化合物のマウスへの投与実験を行うべく予備検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
甲状腺機能低下症のレトロスペクティブコホート研究について、データの再確認と統計学的な検証を進め、化合物スクリーニングとコホート研究のいずれにおいても変化が確認できるより蓋然性の高いヒット化合物を確定させる。 ヒット化合物による変化が甲状腺ホルモン脱ヨード酵素を介すると確定するには、まだ科学的に不十分と考えられる。このギャップを埋めるため、ヒット化合物のマウスへの投与実験を行い、臓器における甲状腺ホルモン脱ヨード酵素の発現変化や、甲状腺ホルモンおよび代謝産物の比の変化が妥当であるか検証する。
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Research Products
(3 results)