2019 Fiscal Year Research-status Report
ベージュ脂肪細胞におけるUCP1非依存性熱産生機構の解明
Project/Area Number |
19K18008
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
長野 学 広島大学, 病院(医), 助教 (40838786)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ベージュ脂肪細胞 / 熱産生 / UCP1 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱産生能をもつ褐色脂肪細胞や,白色脂肪組織内に様々な環境刺激によって誘導されるベージュ脂肪細胞において,脱共役蛋白UCP1は熱産生に必須であると考えられてきた.しかし近年,ベージュ脂肪細胞において,UCP1に依存しない熱産生機構として,細胞内カルシウム(以下Ca2+)回路を介した機構が報告された.しかし,Ca2+の調節機構は未だ不明である. そこで我々は細胞内Ca2+の輸送に関わるイノシトール三リン酸受容体(以下IP3R)と相互作用する因子の検索を行い,IP3Rと解糖系の最終段階を制御するピルビン酸キナーゼ(以下PKM2)とが相互作用することを見出した. ベージュ脂肪細胞では,白色脂肪細胞に比べてPKM2の活性が高かった.またベージュ脂肪細胞でPKM2をsiRNAによって欠失させRNA-seqによる網羅的遺伝子発現解析を行うと,野生型に比べCa2+代謝関連遺伝子群の発現が低下することがわかった.さらにPKM2はベージュ脂肪細胞内で,IP3RだけでなくミトコンドリアのCa2+輸送に関わるVDAC1とも相互作用しており,PKM2はベージュ脂肪細胞内で細胞内Ca2+の制御因子として機能していると考えられた. また,UCP1に依存しない熱産生経路について,クレアチン余剰回路も報告されている.褐色脂肪細胞の分化調節因子であるPRDM16/EHMT1/MATII複合体の研究を進めていく上で,MATIIがクレアチンの生合成に必須であることがわかった.ベージュ脂肪細胞でMATIIを阻害薬FIDAS-5によって阻害すると細胞内クレアチンは有意に減少した.そして阻害によって細胞の酸素消費量が有意に減弱した.さらにUCP1をノックアウトしたベージュ脂肪細胞で同様に検証すると,やはり酸素消費量が有意に減弱した.以上からMATIIはUCP1に依存しない,クレアチン依存性熱産生にも必須であることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
In vitroでの解析については概ね予定通り進行している. しかし,脂肪組織特異的PKM2ノックアウトマウスの作製,またUCP1ノックアウトマウスの入手も遅れている.そのため,in vivoでの表現型解析が当初の予定より遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
ベージュ脂肪におけるPKM2のCa2+調節機構についてより詳細に解明する目的で,PKM2過剰発現株を作成しgain-of-functionを検証する.さらに,ミトコンドリア・細胞内のCa2+濃度を異なる条件下で検証し,PKM2依存的か否かを検証する.さらにヒトベージュ脂肪細胞株においても同様に検証する. また引き続きin vivoでの解析を進めるべく,ノックアウトマウスの作製をすすめる. また,MATIIのαサブユニットを脂肪組織特異的にノックアウトしたマウスを作成し,同様にin vivoでの表現型を検証する.
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