2019 Fiscal Year Research-status Report
BRCA1/BARD1の中心体制御機構の破綻による発がん・悪性化機構の解明
Project/Area Number |
19K18020
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大塚 慧 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (20772437)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | BRCA1 / BARD1 / 乳がん / 中心体 |
Outline of Annual Research Achievements |
BRCA1(Breast Cancer 1)は、その変異により遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)を引き起こす癌抑制遺伝子で、近年は難治性乳がんのトリプルネガティブ乳がんとの関わりが注目されている。BRCA1はBARD1とヘテロダイマーを形成し、ユビキチン化能を示す。これまでBRCA1/BARD1複合体はDNA修復のが注目されてきたが、乳腺細胞において中心体制御能を持つことが明らかとなった。BARD1は様々なアイソフォームが存在し、乳がんや卵巣がんでその発現が確認されている。BARD1のアイソフォームは、全長BARD1と拮抗的に作用することが報告されており、その発現と発がん、がんの悪性化機構の解明が課題となっている。本研究では、乳がん細胞において、BARD1アイソフォームの過剰発現によって引き起こされる中心体異常とその分子機構を解明する。本年度の解析により、これまでに乳がん細胞においてBARD1アイソフォームの過剰発現により顕著な中心体異常を引き起こすアイソフォームを同定し、その詳細な分子機構の解析を行っている。またそのアイソフォームの中心体制御能に関与する中心体タンパク質を同定し、BRCA1/BARD1-FLおよびBARD1アイソフォームとの相互作用解析を行った。また、中心小体伸長因子に対して、BRCA1/BARD1-FLは不安定化させ、BARD1アイソフォームは安定的させることからこれまでのBARD1アイソフォームの知見と同様にBARD1-FLとBARD1アイソフォームが中心小体伸長において拮抗的な作用を示す可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BARD1アイソフォームの中心体制御における機能解析を目的とし、RINGドメインを欠損したBARD1ω、RINGドメインおよびANKリピートを欠損したBARD1δ、RINGドメインの欠損しN末に特異的な24アミノ酸を持つBARD1βを乳がん細胞においてすべてのアイソフォームで中心体数の異常を引き起こすことを明らかにした。加えて、BARD1βの過剰発現は、中心体数の異常に加え、中心小体の過剰伸長が起こることが明らかとなった。一方で、ペプチド抗体を作成し、内在性BARD1βの発現確認および内在性タンパク質の相互作用解析を行っているが現在条件検討に難航している。 BARD1βの過剰発現が中心体の過剰伸長を引き起こす分子機構を明らかにするため、中心小体の伸長因子の相互作用を解析したところ、BARD1βとの相互作用し、その発現量を増加させる結果を得た。またその中心小体伸長とBARD1βの相互作用に重要な領域も同定し、その領域を含む断片の発現により中心小体の過剰な伸長が引き起こされることも明らかとなった。 一方でBARD1-FLは中心小体伸長の過剰な発現を抑制させることを明らかにし、その相互作用も確認している。また、BARD1-FLおよびBRCA1はともに中心小体伸長因子と相互作用することを明らかにしており、中心小体伸長因子に対してBARD1βとBRCA1/BARD1-FLは拮抗した作用を示す可能性を示唆する結果が得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの解析で、BARD1βの過剰発現による中心小体の過剰伸長には、BARD1C末に存在するBRCTドメインが必要であるという結果が得られている。BRCA1/BARD1-FLの中心体制御能は、BARD1のC末でOLA1と相互作用することが重要だと考えられており、OLA1はBARD1-FLあるいはBARD1βどちらにおいて重要な機能を果たすのか解析する。 BARD1βに関しては、ペプチド抗体を作成し、内在性のBARD1βの発現確認を行っており、これまでHEK293Tで明らかになってきた相互作用を確認していく必要がある。また また、BARD1-FLはBARD1βと反対の機能を果たす可能性を示唆する結果が得られているが、これまでは過剰発現による観察しやすい条件で行ってきたため、今後は内在タンパク質においても同様の結果が得られるのか解析していく。加えて、BARD1-FLの過剰発現によるタンパク質の発現抑制はBRCA1/BARD1-FLのヘテロダイマーによるE3ユビキチンリガーゼ活性によるものである可能性が高い。そこで、E3活性の低いBRCA1変異体I26AやBRCA1と相互作用できないBARD1変異体を用いて中心小体伸長因子のユビキチン化の有無を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
上記のように計画は順調にいっており、BARD1-FLとBARDβの拮抗した機能が明らかになりつつある。内在性BARD1βに対する実績のある抗体がないことから、抗体を自作作成し、検出条件を決定する必要があるが、今回作成した抗体は非特異的なバンドの検出により、内在性のBARD1を検出する条件の確定に少し難航し、その後の計画として使用する予定分で未使用金が生じた 現在、BARDβ検出の問題は解決されたため、予算は当初の研究計画通りに研究を遂行する予定である。
|