2019 Fiscal Year Research-status Report
バイオリアクターを用いたヒトiPS由来膵β細胞の大量調製
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19K18024
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小長谷 周平 京都大学, iPS細胞研究所, 特定研究員 (60770295)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | バイオリアクター / iPS細胞 / 分化誘導 / 膵島 / 大量培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
Ⅰ型糖尿病の根本治療法として膵島移植が行われているが、移植膵島の不足が問題となっている。新たな細胞供給源としてES/iPS細胞から分化誘導した膵島の利用が期待されている。移植治療のためには約10^9 個程度の大量な細胞が必要であるので、大量分化培養法の確立は必要不可欠である。本研究では、バイオリアクターを用いたヒトiPS細胞から膵島細胞の三次元分化誘導法の確立を目的とする。これまでの研究において、無血清・無フィーダーの培養条件化で、多能性幹細胞由来の膵前駆細胞(SOX9及びPDX1陽性細胞)高効率に増殖させることができる培養法を独自に確立している。この技術により増幅した膵前駆細胞から膵島細胞を大量調製することができる。本年度は、ヒトiPS細胞由来膵前駆細胞の増幅培養における三次元攪拌浮遊培養化の検討を行った。 まず、新たな2株のヒトiPS細胞細胞株から膵前駆細胞への分化誘導及び前駆細胞の増幅細胞の再現性の確認を行った。膵前駆細胞をアガロース製マイクロウェルに播種した後、無血清培地中で静置培養を行い、最大16継代で10^8倍程度に増幅することができた。 次に、30 mLスケールでのバイオリアクターでの三次元攪拌培養を行った結果、マイクロウェルを用いた三次元静置培養の場合と同様に、膵前駆細胞を増幅することができた。増殖速度は静置培養と同程度であった。 以上のように、膵島移植に十分量な細胞を得るだけの膵前駆細胞の増幅及び、バイオリアクターを用いた三次元攪拌培養による膵前駆細胞の増幅を達成した。今後は、基礎培地や溶存酸素量などの各種培養条件を最適化し、収量の増加を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たに由来の異なる2株のヒトiPS細胞から膵前駆細胞を誘導し、増幅培養の再現性を得ることができた。これまでの研究では、10^4倍までの増幅であったが、増幅培養をさらに延長し、マイクロウェルを用いた三次元静置培養ではあるが、10^8倍以上に増幅することができた。また、小スケールではあるが、三次元浮遊攪拌培養による膵前駆細胞の増幅を可能にした。 以上のように、膵島移植に十分量な細胞を得るだけの膵前駆細胞の増幅が可能である事、三次元攪拌培養により増幅が可能である事を明らかにした。当初の予定目的と照らし合わせて、順調と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
再現性良く安定的な製造を行う上で、分化誘導因子の検討だけではなく、代謝による培地成分の変動、攪拌によるシェアストレスや溶存酸素量などの外的な各種培養条件を最適化し、工程管理を行う必要がある。バイオリアクターを用いた三次元攪拌培養による膵前駆細胞の増幅培養が可能であることが分かったが、増殖速度は1週間で3倍程度と低く、十分量の細胞数を得るためには2~3か月の培養が必要である。今後は、基礎培地や溶存酸素量などの各種培養条件を最適化し、より高収量の膵前駆細胞が得られる培養条件を検討していく。次に、バイオリアクターを用いて、増幅した膵前駆細胞を膵島細胞へ分化誘導する培養条件の検討を行う。インスリン分泌量などの膵島機能についても評価を行う予定である。
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