2021 Fiscal Year Research-status Report
タキサン系薬剤に対する抵抗性メカニズムの解明と新規治療薬の開発
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19K18037
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
浅野 倫子 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (70624427)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 乳癌 APOBEC3F |
Outline of Annual Research Achievements |
乳がんのなかには、キードラッグであるタキサン系薬剤に抵抗性を示すものがあり、その抵抗性の克服が喫緊の臨床的課題となっている。タキサン系薬剤に対する 抵抗性の機序として、最近、チューブリン遺伝子スーパーファミリーの体細胞変異と、TEKT4という微小管を安定させる蛋白をコードする遺伝子の体細胞変異の関与が報告された。私たちはこれまでの研究で、ゲノム変異を誘導するAPOBEC3F遺伝子がタキサン系薬剤抵抗性に関与していることを世界で初めて見出した。 これらの知見を踏まえ、APOBEC3F遺伝子が、チューブリン遺伝子およびTEKT4遺伝子の体細胞変異を引き起こすことが、タキサン系薬剤抵抗性の主因となる可能性に着目した。APOBEC3Fに関してこれまでに行った実験として、TaqMan RT-PCRシステムを用いて、約500例の乳がん症例のうち、術後化学療法としてタキサン系薬剤を使用した124例を対象に、乳がん凍結標本からRNAを抽出し、APOBEC3FのmRNA発現と臨床病理学的因子および予後との検討を行った。その結果、APOBEC3F高発現は極めて予後不良であった。また、腫瘍径、腋窩リンパ節転移の有無、核異型度、ER、PgR、HER2、化学療法の有無、APOBEC3F mRNAの発現を無再発生存期間、全生存期間について単変量、多変量解析を行った結果、無再発生存率のCox比例ハザードモデルで、核異型度やER、PgRと同様にAPOBEC3F発現量は単変量で有意な予後因子となったが、多変量解析ではAPOBEC3Fは有意な予後因子とはならなかった。また、症例数を約600例に増やし予後解析すると、APOBEC3F高発現は予後不良な傾向にあったが、統計学的な有意差はなかった。蛋白発現についても同様に予後解析したが、APOBEC3F高発現は予後不良な傾向ではあったが、統計学的有意差はなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
乳癌組織を使用した検討は順調に進んでいるが、乳癌細胞株を用いた検討は、細胞が期待通り増えない状況に陥り、原因究明に時間を要したが、現在は解決している。 また、新型コロナウイルスの影響で、試薬の納入遅れがありやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
乳がん細胞株を用いてAPOBEC3F発現を解析する。APOBEC3FのmRNA発現をTaqMan RT-PCRにて測定したところ、乳がん細胞株のうち、MCF7よりT47Dに高発現であることを確認した。APOBEC3F高発現乳がん細胞株であるT47Dを用いて、下記の実験を行う。乳がん細胞株におけるAPOBEC3F発現抑制(ノックダウン)に関する検討:APOBEC3Fに対するsiRNAを用いて、APOBEC3F高発現乳がん細胞株であるT47Dに対しAPOBEC3F発現をノックダウンして、細胞増殖能をWST-1アッセイにて検討する。また、タキサン系薬剤の抵抗性について検討するため、前記同様に、APOBEC3Fをノックダウンするとともに、タキサン系薬剤を同時投与した場合における細胞増殖能を解析する。
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Causes of Carryover |
乳がん細胞株を用いた実験が進んでいなかったため、次年度使用額が生じた。使用計画:APOBEC3F高発現乳がん細胞株を用いて、細胞増殖能やタキサン系薬剤の抵抗性など実験を行う。
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