2019 Fiscal Year Research-status Report
術後合併症モデルにおけるNETs形成と腫瘍細胞の転移に関する解析
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19K18040
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山下 俊樹 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (10815179)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 炎症 / 腫瘍転移 / NETs / トロンボモジュリン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、炎症によるNETs形成と腫瘍細胞の転移との関係についてin vivo実験系により評価をおこない、NETs形成の阻害作用を有するヒト組換え型トロンボモジュリン(rTM)の転移抑制効果を検証することを目的としている。当初研究計画では、腫瘍細胞を心腔内(左心室)へ投与し血行性転移モデルを作製することを目的としていたが、in vivoイメージアナライザーや解剖による評価の結果、肝転移を多く認めること確認されたが、一方において心腔外への腫瘍細胞漏出が一定の割合で起こってしまうことで、個体間により転移に差が生じ正確な評価が困難であることが示唆された。この結果を踏まえ、in vivo転移モデルについて、当初計画にあった心腔内投与による血行性転移モデルから、新たに皮下移植血行性肺転移モデルへの変更を行った。マウスに腹膜炎を起こすCLPモデルを作製し、上記モデルを用いて炎症と転移の関係について検討した。肺組織への転移の評価は、CTスキャンおよび病理組織を用いて行なった。CLPを行なった腹膜炎群で、有意に閉組織での転移結節の増加を認め、炎症によって転移が亢進する可能性が示唆された。 次に、CLPによる腹膜炎を惹起させたマウスに、rTM投与もしくは生理食塩水の投与を行い、rTMと転移の関係について検討した。転移の評価は同様にCTおよび病理組織を用いて行なった。rTM投与群では、有意に転移が抑制された。また生存個体数についてもrTM投与群で有意に多い結果となった。NETs形成については当初免疫染色のみでの評価を予定していたが、NETs構成成分である血中の好中球エラスターゼおよびヒストン・DNA複合体を測定も併施した。CLPによる腹膜炎モデルにおいて、rTM投与によりこれらが有意に抑制させることが確認された。この結果よりrTM投与によりNETs形成が抑制させている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画にあったマウス大腸癌細胞(CT26)の心腔内投与による血行性転移モデルでは、心腔外への腫瘍細胞の漏出が一定の割合で生じることが認めれ、転移部位、頻度、腫瘍結節のサイズについて個体間により大きく異なり、モデルの定型化が困難であった。この結果にもとづき、in vivo実験系をマウスsarcoma由来LM8を用いた肺転移モデルへ変更を行ったために実験計画に遅れが生じた。新規モデルでは、血行性肺転移の頻度が安定しており、マイクロCTや病理学的評価により再現性が確認された。現在までの進捗状況として、このin vivo肺転移モデルを用いて、炎症による肺転移の亢進が確認されており、rTM投与による転移抑制効果についても解析が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果として、CLP施行マウスにおける腫瘍細胞の肺組織への転移の亢進が確認されている。また、rTM投与による転移抑制効果が認められた。今後、LM8皮下移植による肺転移モデルの再現性を検証する。また、rTM投与による肺転移抑制効果の再現性についても確認を行う。さらに、炎症により誘導されるNETs形成についても、転移先である肺組織について病理学的な評価を実施する。
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Causes of Carryover |
次の3つの実験計画のため次年度研究費の使用が生じた。①CLP炎症モデル動物における腫瘍細胞(LM8)の肺転移について、in vivo実験モデルにより再現性の確認のための実験を行う。②rTM投与による肺転移抑制効果について、in vivo実験モデルにより再現性の確認を行う。③CLP施行モデルにおいて肺組織におけるNETs形成について、免疫染色法により病理学的な評価を実施するための条件検討を行う。以上の実験によりモデルの再現性や条件最適化を行うことにより、当該研究成果の科学的根拠が実証されると考える。
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