2019 Fiscal Year Research-status Report
lncRNAによるオリゴデンドロサイト分化の制御と再生医療への応用
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19K18044
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
井上 順治 大阪医科大学, 医学部, 助教 (20814859)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脱髄 / iPS細胞 / オリゴデンドロサイト / long non coding RNA / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目はオリゴデンドロサイトへの分化誘導とそれに伴う細胞の遊走能の獲得の評価を行った。 脊髄のpMN領域の発生機序を模倣するために、主にレチノイン酸とソニックヘッジホッグシグナルを用いて、iPS細胞をオリゴデンドロサイトへ分化誘導を行った結果、pMN領域よりも下位にある底板の性質を持つ細胞を得た。ここの細胞は性質がラジアルグリアに似ているが、過去の報告ではオリゴデンドロサイトの前駆細胞はこの細胞より分化すると報告があるため、現段階ではこの細胞からオリゴデンドロサイト前駆細胞への誘導をかけ、分化度合いの評価を行っている。 また過去の報告でオリゴデンドロサイト前駆細胞が遊走能を獲得するためにはCDK5の活性化が必要との報告と、レチノイン酸存在下でオリゴデンドロサイトの前駆細胞となる神経幹細胞でCDK5の発現が見られるとの報告があることから、レチノイン酸添加のタイミングの細胞の遊走能を評価したが、神経幹細胞の段階では遊走能の亢進は認められなかった。 今後は上記で評価を行った分化のタイミングの細胞よりもさらに後期の細胞(主にPDGFRを発現した細胞)に焦点を当て、アガロースドロップやボイデンチャンバーを用いて遊走能獲得の評価を行いたいと考えている。 また細胞誘導と同時に、実験計画にある細胞の遺伝子発現の性質をコンピューター上で評価するために、基礎的な講習会や学会に参加し、解析のための知識を得た上で、解析の基本教本を用いて解析手法を学んだ。今後は実際に誘導をかけたオリゴデンドロサイトに対し次世代シークエンス解析を行い、その結果データをコンピューター上で解析し、細胞のRNA発現の性質を可視化したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画書では1年目に細胞分化を完了し、次世代シークエンスを行う段階まで研究を進める予定であったが、オリゴデンドロサイトの分化時間が2か月と長いことと、実際に公開されているプロトコールは個々の細胞株に適するわけではなく、細かく条件検討を行う必要があるため、現段階では解析に適しているオリゴデンドロサイトを得られておらず、実験進捗はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
推進方策は計画書と同様にオリゴデンドロサイトの分化誘導を行い、遊走能を獲得したタイミングを評価する。その結果を踏まえたうえで、次年度ではその細胞の次世代シークエンス解析と、さらに過去の論文で報告がある遊走能の亢進を促す化学物質を用いて、遊走能が亢進した細胞内でどのような変化が起こっているかを遺伝子発現解析で解明したいと考えている。
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Causes of Carryover |
1年目で評価に適するオリゴデンドロサイトを得て、外注の次世代シークエンスを行う予定をしていたが、細胞分化に2か月と長い期間を必要とすることが原因で、条件検討の細胞分化に時間を費やしてしまい、未だに次世代シークエンス解析までは至っていない。次年度では、解析に適した細胞まで誘導を完遂させるための試薬購入、また次世代シークエンス解析の外注委託、さらに次世代シークエンスデータの解析のための機器購入に研究費を用いる予定である。
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