2020 Fiscal Year Annual Research Report
ナノキャリア技術を応用した新規消化器癌リンパ節転移制御法の開発
Project/Area Number |
19K18048
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
川北 雄太 秋田大学, 医学部附属病院, 助教 (90772484)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 消化器癌 / リンパ節転移 / スフィンゴシン-1-リン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、消化器がんの診療に関わる多くの研究者が抱える「リンパ節転移の発生に影響を及ぼしている因子は何か」との難題に対して、体内で情報伝達物質(メディエーター)として働くことが知られている、脂質の一種でるスフィンゴシン-1-リン酸(以下、S1P)の機能に着目し、S1Pが生み出すシグナル系統を特定の薬剤で制御することによって、リンパ節転移の発生を抑制することができるかどうかを検証することが目的であった。 平成31~令和元年度は当初の計画通り、癌のリンパ節転移への関与が指摘されている、S1Pを産生する酵素であるSphK1の遺伝子を人為的に機能しないように処置した癌細胞と、同じくSphK1遺伝子を機能しないように処置したマウスを使って、癌細胞と宿主(マウス)それぞれのSphK1がリンパ節転移発生に及ぼす影響を検証する実験を行った。さらにその実験と並行して、令和2年度課題である、SphK1と、S1Pが細胞内で結合する受容体のそれぞれの働きを阻害する薬剤を癌細胞を植え付けたマウスに投与してリンパ節転移が抑制されるかどうかを検証する実験も行ったが、令和元年度ではリンパ節転移のはっきりとした抑制効果は得られなかった。 そこで令和2年度は計画を多少変更し、臨床検体を用いた解析も並行して着手した。術前に抗がん剤などの治療を行わずに手術治療を行った食道癌患者の癌組織と血液を使って、癌細胞内のSphK1遺伝子の量と血清中のS1Pの量がリンパ節転移にどう関わるかどうかを検討した。まず試験的に10例の検体に関して解析を行ったが、癌細胞内のSphK1遺伝子量、血清中S1P量、リンパ節転移の有無や転移個数の間に有意な相関が確認できなかったため、追加の検体解析は見送った。一方、リンパ節転移抑制実験も難航し、特にMatrigel plug assayを用いたリンパ管新生の評価技法に課題を残す結果となった。
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