2019 Fiscal Year Research-status Report
細胞極性に着目したインスリン分泌細胞効率的分化誘導のための新規培養法の研究
Project/Area Number |
19K18056
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
岩橋 衆一 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 徳島大学専門研究員 (30531751)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | インスリン分泌細胞 / 細胞極性 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに間葉系幹細胞(MSC)から膵島細胞様の機能を持つInsulin producing cell(IPC)への分化誘導実験に着手しており、Histone deacetylase inhibitorを添加した2 step protocolを確立した。さらにより効率的にMSCからIPCへの分化誘導可能なプロトコールも必要であると考え、今回電流に着目した。細胞と電気誘導に関しては、高圧静電誘導が生細胞の抗アポトーシス効果をもたらす報告や、電界が均一に発生する培養システムの開発が報告されている。また、ラット副腎髄質の好クロム性細胞腫PC12細胞が、電位印加により神経様細胞に分化する報告もある。今回、プロトコールのうち、初期のstep1の段階で文献で既に報告されている条件である100Hz,200mVの電流で72時間刺激し、IPCの細胞形態、Dithizone染色、cell viability、ATP assay、stimulation indexについて刺激なしのIPC(control群)と比較検討した。結果としては、細胞形態的には、辺縁が不整となり、粗悪な細胞集塊となるsphereが散見された。dithizone染色では、Image Jによるstaining intensityがcontrol群では241であったのに対し、刺激したIPCでは198と有意に染色強度が低下した(P<0.01)。CCK-8 assayによりcell viabilityを検討したところ、viabilityは20%まで有意に低下した(P<0.01)。ATP assayでは、control群のATP量が平均0.78μmol/Lであったのに対し、刺激したIPCのATP量は平均0.06μmol/Lであり、有意な低下を認めた(P<0.01)。糖応答能を評価するstimulation indexは、control群が6.1であったのに対し、電気刺激したIPCは2.3と有意に低下した(P<0.01)。今回の検討において、電気刺激が強すぎたことにより細胞が破壊され、生存率が著名に低下し、形態が悪化していた可能性が考えられた。動物細胞の定電位印加による細胞増殖制御は非常にsensitiveな条件を必要とすると報告されているため、刺激条件等のさらなる検討が必要であると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
MSCからIPCへの分化誘導における電気刺激の効果を検討することが本研究の第一段階と考えているが、今回、文献報告されている条件では、電気刺激(定電位印加)の効果は確認できなかった。電気刺激の強度、刺激時期に関してさらなる検討が必要であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回電気刺激による明らかな効果は確認できなかった。電気刺激の強度、刺激時期に関してさらなる検討を加える必要があると考えられる。さらに、そのメカニズムとしては、電気刺激により細胞表面の負への帯電を維持し、カリウムイオンの細胞内取り込みを亢進させ、またGap junction形成を促進することでさらにTight Junction(TJ)が形成され、TJ蛋白であるZO-1発現によるErk亢進を介して、IPCのより効率的な分化・誘導につながるといった仮説のもと、IPC分化誘導における電気刺激、TJの効果を検討する予定である。なお、変動電位印加によって、細胞膜上のカルシウムイオンチャンネルを通じ、リガンドを用いずに細胞内シグナル伝達経路を活性化することが可能とする報告もあり、今後、定電位のみでなく変動電位印加についても検討することとした。
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