2019 Fiscal Year Research-status Report
腸管内におけるTim3単独発現細胞-大腸がん新規免疫治療に向けて-
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19K18088
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
北風 雅敏 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (30835252)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 大腸癌 / Tim-3単独陽性CD8 T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん治療の一つとして抗PD-1抗体の成功は、腫瘍免疫の重要性を示している。さらには近年、抗腫瘍免疫に対する腸内細菌叢の働きも明らかになってきた。我々は、大腸がん患者の正常腸管において特徴的な細胞群(Tim-3単独発現CD8T細胞群)を見出した。術前化学療法後の胃がん組織内で出現するTim-3単独発現CD8T細胞は、グランザイムBやパーフォリンを高発現しており、大腸正常腸管においても同様の機能を持つことが期待される。当研究では、大腸がん患者の正常腸管より精製した免疫細胞中のTim-3単独発現CD8T細胞の、①頻度解析、②予後を含めた臨床病理学的意義との関連、③機能解析、④腸内細菌を軸とした発生メカニズム解析を検討することで、がん治療としての腸内細菌を用いた新規免疫療法の可能性につなげる事を目的とした。 これまでヒト大腸がん腫瘍検体/正常腸管粘膜検体を30例集積し、測定・解析を実施している。30症例の解析において、正常腸管のCD8T細胞 におけるTim3単独発現CD8T細胞の割合は6.9%(±6.2)であり、(同一患者)腫瘍組織のCD8T細胞におけるTim3単独発現CD8T細胞の割合4.4%(±4.0)と比較して、優位に高発現を認めた(p=0.0012)。Tim-3単独発現CD8T細胞は大腸がんにおいては、腫瘍組織内に比較して正常腸管に高頻度で出現している事を確認した(①)。正常腸管におけるTim-3単独陽性CD8T細胞の発現の大小で2群に分け、年齢、性別、腫瘍局在、進行度を含めた臨床病理学的因子との比較を行ったが、統計学的な相関関係は認めなかった。予後解析では、Tim-3単独陽性CD8T細胞の高発現群と低発現群における予後に統計学的有意差は認めなかった(②)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、患者から採取した腫瘍組織および正常組織・末梢血・便を対象とした免疫細胞解析・腸内細菌解析を必要とする。腫瘍組織・正常組織・末梢血の収集は50例/年を目標に収集しているが、患者同意の関係等で当初の目標症例数には至っていない(30例/年)。研究対象である正常腸管におけるTim-3単独陽性CD8T細胞に関しては単位組織あたりの細胞数が少なく、機能解析を行うには十分量の検体採取が出来ていない。
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Strategy for Future Research Activity |
正常組織内におけるTim-3単独発現CD8T細胞の存在意義に関しては、発現頻度と臨床病理学的因子との関連性を更に解析し検討する。腸内細菌叢の形成に関わる食生活に関してはアンケート調査を行う。また大腸がん腫瘍組織および末梢血から得られた免疫プロファイリングに関しても臨床病理学的因子との関連性に関して更に検討を行う予定としている。
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Causes of Carryover |
NGS解析による臨床検体の網羅的遺伝子解析を計画していたが、今年度は患者同意の関係で実施する事が出来なかった。またマウスを用いた腸内細菌移植モデルでの研究も実施に至らなかったため、網羅的遺伝子解析費用及びマウス関連費用に関しては次年度での使用を検討している。
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