2019 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌オルガノイドを用いた転移形成ニッチ因子の同定とニッチ因子標的治療の開発
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19K18093
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐田 政史 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (10783508)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 大腸癌 / オルガノイド / ニッチ因子 / 癌関連線維芽細胞 / 大腸癌肝転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ヒト大腸癌切除組織由来の大腸癌オルガノイドおよび間質細胞を用いて、大腸癌の転移成立・維持に関わるニッチ因子を同定し、それらを標的とした新たな大腸癌転移制御法の開発を目的とする。 本年度はまず、オルガノイド作成にあたって必須となるヒト大腸癌の原発巣および肺・肝転移巣の組織サンプルを集積するとともに、各症例における臨床病理学的背景についてもデータを収集し、統計学的分析を行った。その結果、転移巣を切除した症例では同時性、異時性の切除タイミングにかかわらず、比較的良好な予後が得られていたが、一方で転移巣切除が有効でない症例も存在することが示唆された。 また、当研究室の他のグループが進めている膵癌の研究において、すでに複数のサンプルからライブラリーの作成に成功している膵癌オルガノイドでは、個々の症例によって依存するニッチ因子が異なっていること、それらのニッチ因子は主に線維芽細胞である膵星細胞が産生していることが示唆されている。さらに、膵癌の肝転移において重要な鍵を握る肝微小転移の形成に関して、好中球のNETが転移促進的に作用していることを明らかにした。 今後はこれらの結果に基づいて、大腸癌の組織においても同様にオルガノイドおよび癌関連線維芽細胞のライブラリー樹立を進め、それぞれのオルガノイドが依存しているニッチ因子および線維芽細胞との関係を明らかにしていく。まだ転移巣組織のオルガノイドの樹立には至っていないが、大腸癌の肝転移、肺転移巣についても組織サンプルの集積を進め、微小環境を中心に転移の形成を制御する因子の特定を進める。最終的には、転移巣の切除が予後改善に有効であるかどうかの判別や、同定したニッチ因子を標的として転移を抑制する新たな治療戦略を開発することを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
膵癌に関してはこれまでの実績からオルガノイド作成のプロトコルをほぼ確立できているが、大腸癌オルガノイドの作成についてはまだ樹立成功率が低いためライブラリーの作成が進んでおらず、全体として進捗が当初の計画からやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
膵癌でのオルガノイド作成ノウハウに基づき、今後は大腸癌オルガノイド作成にあたる人数を増員して、大腸癌の原発巣および転移巣のライブラリー樹立を加速させる。また、同時に患者由来の組織を直接マウスに移植するPDXモデルの作成も進め、より詳細にヒトの大腸癌組織を再現できるモデルを完成させる。
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Causes of Carryover |
大腸癌オルガノイドの作成が当初の計画より遅れているため。 次年度はヒトの大腸癌組織を再現できるモデルを作成させるために研究用試薬、器材などの消耗品、受託解析の費用に使用する予定である。
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