2019 Fiscal Year Research-status Report
食道がん化学療法に影響を与える腸管内microbiomeの網羅的解析
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19K18094
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
八木 泰佑 熊本大学, 病院, 非常勤診療医師 (60836253)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | microbiome / 食道癌 / 術前化学療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
Microbiomeとは人体に生存する微生物群とその遺伝子および代謝活性の総称である。人体においては13兆のヒト細胞が130兆の細菌細胞と共存しており、また、2万のヒト遺伝子が、500万~800万の細菌遺伝子、いわゆるmicrobiomeと共存している。がん治療においても化学療法の効果にも影響を及ぼすことが示唆されており、詳細な検討が必要である。 我々はこれまで、上部消化管がんにおけるFusobacterium nucleatumの意義について検討を行っており、Fusobacterium nucleatum陽性群は、陰性群に比べて予後不良であることを報告した。そのメカニズム解明のためにin vitroでの検証も行っている。近年、microbiomeが抗がん剤感受性に影響を及ぼす可能性が報告されている。我々の食道がんデータベースにおいても、Fusobacterium nucleatum陽性症例では術前化学療法の治療効果が不良であることが示された。さらに、Fusobacterium nucleatumと食道がん細胞株との共培養実験の結果から、Fusobacterium nucleatumがautophagyを誘導することにより抗がん剤抵抗性に関与していることが明らかとなった。今後の研究において、食道がん進展におけるFusobacterium nucleatumの役割がより詳細に解明されれば、がん治療の新たな創薬に繋がる可能性があると考えている。 また、我々は食道がんにおける免疫チェックポイント(Programmed death ligand-1(PD-L1)やPD-L2)の研究を並行して行っている。食道がんにおいてPD-L1およびPD-L2高発現は予後不良因子であることがわかった。また、腫瘍関連マクロファージが食道がん細胞株のPD-L1発現上昇に寄与することを報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、我々は食道がんに対してFusobacterium nucleatumが与える影響を中心に研究を行っている。これらの研究では、Fusobacterium nucleatumが食道がんの発癌や化学療法抵抗性の獲得に寄与することが示されており、そのメカニズムとしてautophagyが影響していることが明らかとなった。Autophagyを阻害することで化学療法抵抗性は失われることも明らかとなっており、Fusobacterium nucleatumを制御することで食道がん化学療法の治療効果を制御できる可能性が示された。この結果は、食道がん治療の新たな創薬に役立つと考えられる。 Fusobacterium nucleatumの機能を解明していく一方で、Fusobacterium nucleatum以外のmicrobiomeに関しても注目して研究を進めていかなければならない。化学療法前後の便試料を採取し、解析することで化学療法に影響を与えうる特定のmicrobiomeの同定や、microbiomeの変化を明らかとすることができれば、食道がん治療に大きな影響を与える研究となると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
食道がんに対して術前化学療法後に食道切除を施行予定の患者のうち、現在食道がんの術前化学療法に一般的に用いられる5FU+シスプラチン療法(FP療法)を施行する患者を対象として前向きに検体採取を行う。術前化学療法後に食道切除を行う症例に対して化学療法施行前と、施行後(手術前)に便検体を採取する。症例を集積し、術前化学療法の奏効例20例と、非奏効例20例の便試料を16S リボソームRNA(rRNA)シークエンスで網羅的に解析することで、化学療法の治療効果に影響を及ぼすmicrobiomeの同定、および化学療法前後でのmicrobiomeの変化が化学療法の治療効果に影響を与えるか否かを明らかとする。化学療法に影響を与えうる特定の細菌種が同定できた場合には、食道がん細胞株と同定されたmicrobiomeとの共培養実験を行い、化学療法抵抗性が生じるメカニズムを検証する。また、当科の保有する500例の食道癌データベースを用いた統合解析を行う。術後も患者を追跡し、予後のデータ、再発の有無などを観察する。 我々は食道がん手術前後における体重減少とmicrobiomeの変化についても研究中であり、現在鋭意症例を集積中である。便検体採取、保管についてマニュアルを作成しており、本研究の症例集積にも役立てることができると考えている。
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Causes of Carryover |
理由)試薬、消耗品等については、医局保管のものを使用することが出来た。
使用計画)主に試薬などの消耗品購入費に充てたいと考える。
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