2020 Fiscal Year Research-status Report
ADAMTS13関連因子を軸とした肝虚血再灌流障害に対する新規治療戦略
Project/Area Number |
19K18100
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
吉川 高宏 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (80773275)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 肝切除 / ADAMTS13 |
Outline of Annual Research Achievements |
VWFは血管内皮細胞で産生され,UL-VWFマルチマーとして血中に放出される.一方で肝切除,特にPringle法による虚血再灌流障害の主要ターゲットが血管内皮細胞であることが知られている. 現在までの肝切除後のヒト血清を用いた検討では,ADAMTS13活性は術後有意に低下し(p<0.001), VWF抗原量は術後有意に増加した(p<0.001).UL-VWFMマルチマーは術前値0.2%(0.0-7.8)から術後7日目に4.2%(0.1-16.3)と有意に増加した(p<0.001).多変量解析では,Pringle時間が術後UL-VWFマルチマー出現に関する独立した規定因子であった(p=0.043).さらにUL-VWFマルチマーindexは,Pringle時間と正の相関を示した(r=0.444,p=0.017).以上の結果から,UL-VWFマルチマーとPringle法による虚血再灌流障害との関連が示唆された.
Pringle法による虚血再灌流障害が病的血栓の原因とされるUL-VWFマルチマーを増悪させる因子であるとの観点から,実際の肝切除法に近いモデルを作成.C57BL/6J雄生8週齢マウスにおいて,全肝流入血遮断下(遮断時間30分)に30%肝切除を行う.Pringle法による影響を調べるために,Pringleなしの30%肝切除のみを行うグループも作成し,さらに術後にrecombinant ADAMTS13投与を行う群と投与しない群に分け,切除前後のADAMTS13活性,VWF抗原,UL-VWFマルチマー発現,GOT,GPT, T-Bil値を測定するとともに,肝における微小循環を組織学的に検証し,術中Pringle法による虚血再灌流障害に対するADAMTS13補充の治療効果を検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトの肝切除におけるADAMTS13関連因子の動態はすでに解析された.今後は,マウスを用いてrecombinant ADAMTS13の肝保護効果を検証する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はin vivoの研究に移る予定である.具体的には,野生型及びADAMTS13ノックアウトマウスを用い,肝部分虚血モデルを作成する.末梢血及び肝組織を採取し,肝における虚血再灌流障害とADAMTS13活性 ・VWF抗原量・UL-VWFMsとの関連メカニズムを組織学的に検証する. 肝における虚血再灌流障害が立証されれば,recombinant ADAMTS13補充の治療効果を検討する予定である
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