2021 Fiscal Year Annual Research Report
大腸粘液層のバリア機能破綻に着目した炎症性発癌に関与する腸内細菌叢の解明
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19K18105
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
田島 陽介 藤田医科大学, 医学部, 講師 (30757505)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大腸癌 / 粘液層 / 腸内細菌叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ヒト大腸癌手術摘出標本における細菌叢解析において、組織表面の粘液付着有無により細菌叢解析結果が変化するという仮説の実証を検証したものである。2021年度は、これまでに収集したデータの解析及びその結果についての論文作成を行った。解析結果としては、1) 摘出標本の粘膜面および癌表面に生食による圧洗浄を行うことにより外粘液層が除去できること、2) 粘液層と粘液層除去後の組織(癌部、非粘膜)の細菌叢abundanceがいくつかの菌種で異なっていること、3) 粘液層に比べて粘液除去後の組織の細菌叢α diversityが低下していること、がわかった。これらの結果から、粘液層と組織表面あるいは内部の細菌叢構成は異なっていることが示唆された。一般に細菌は組織に直接接触して障害を及ぼすか、組織に近接してバクテリオシン等の毒性物質を産生して組織に障害を及ぼすことで病原性を発揮すると考えられる。すなわち、粘液層に定着している常在細菌ではなく、組織表面あるいは内部に定着する特定の細菌を同定することにより疾患の病態把握につながることが期待される。また、本研究では細菌の組織への接触を阻止するバリアーとなる内粘液層が、大腸癌組織においてほぼ消失していることが確認された。細菌の大腸癌組織表面への定着および内部への侵入が容易であることが予測され、大腸癌進展や抗癌剤耐性との関連が示唆される興味深い結果であった。 以上より、大腸組織の細菌叢解析を行う場合は粘液層の付着程度により細菌叢解析結果が異なることを念頭に置く必要が示唆された。大腸癌の発生・進展・抗癌剤耐性にかかわる特定の細菌同定のためには、粘液層除去後の組織の細菌叢解析が重要であると考えられる。
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Research Products
(1 results)