2019 Fiscal Year Research-status Report
炎症性腸疾患の新たなin vitro病態モデルの確立
Project/Area Number |
19K18106
|
Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
鶴田 覚 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 再生医療センター, リサーチアソシエイト (50814365)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | オルガノイド / iPS細胞 / 免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
炎症性腸疾患の病因として遺伝的要因や環境因子、免疫学的要因が挙げられ、更に炎症細胞や炎症性サイトカインなどの制御因子、上皮バリア機構の破綻などの関与も言われている。これらの多彩な病態を解明し、診断や新たな治療薬の開発を可能にする基礎研究の大きな進展が望まれている。腸炎の実験モデルとして古くからDextran Sulfate Sodium(DSS)を経口投与したマウスなどが用いられてきたが、動物種の違いのみならずその発生機序の再現性に限界がある。本研究では、in vitro で腸の発生が再現でき、免疫機能も含めた生体の腸管が持つ複雑な機能を併せ持つモデルを開発する。それにより腸管発生および再生における免疫担当細胞とのインタラクションの理解とともに行う疾患研究が可能となり、さらに超早期発症のIBDの診断・治療開発へと展開できる。今年度は、ヒトiPS細胞から分化誘導する腸管オルガノイド(ミニ腸)を基盤に、マクロファージを内在化する開発を行った。iPS細胞から誘導する単球細胞系には可視化マーカーを導入し、マクロファージ内在が可視化可能となった。粘膜上皮組織のバリア性を確認後(ZO-1とE-cadherinの共陽性の粘膜上皮組織)、組織マクロファージのマーカーであるRUNX1とHES1の遺伝子発現上昇を認めた。ミニ腸組織内へ内在化したマクロファージの画像解析では、細胞が分枝状に伸びた細胞形態を認めた。電子顕微鏡解析でもマクロファージの存在を確認できた。炎症惹起モデルとしてリポポリサッカライド(LPS)の添加条件を決定することができ、今後はLPS添加での炎症反応性を炎症関連サイトカイン等のタンパク質レベルでの解析を行っていく。今年度は、これまで報告のない腸管オルガノイドモデルの免疫機能性内在化を実現するための重要な基盤成果が達成できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで報告のない、マクロファージの内在化ヒトiPS細胞由来オルガノイドの作製に成功した。マクロファージを内在させる過程で粘膜上皮組織と間質組織の成熟化が認められる傾向にあり、ヒト腸管発生モデルとしても忠実に再現するモデルとして活用できることも期待される結果であった。炎症惹起モデルをよりロバストにしていき、炎症性評価を確実にできることが今後は必要である。そのための重要な基盤は初年度で期待以上に構築できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
免疫系も内在化するなどより機能性を腸管オルガノイド(ミニ腸)へ付加することができた。一方で、作製にはこれまで以上に工程が付加され、作製工程管理と安定化にも工夫が必要となった。今後は技術的な課題も考慮しつつ、高機能化したミニ腸モデルを用いて炎症評価系の研究をより強く進めていく。疾患モデルも計画より早めに検討することになると思うが、そのために疾患モデルのiPS細胞樹立と応用も早めに着手する必要がでてきた。
|
Causes of Carryover |
(理由)試薬の納品が遅れたため。 (使用計画)物品費として使用する。
|
Research Products
(1 results)