2021 Fiscal Year Research-status Report
生体肝移植術後の血栓性微小血管障害症の病態解明とグラフト肝機能の改善を目指して
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19K18111
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
種村 彰洋 三重大学, 医学系研究科, 講師 (80626242)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | TMA / IRI / ADAMTS13 / 肝移植 |
Outline of Annual Research Achievements |
一昨年前に行った、マウスの肝移植を想定したIRIモデル(肝の70%の肝を60分間クランプし、240分のreperfusion)では、抗凝固因子の1種であるエドキサバンを投与することで肝障害が抑えられ、また炎症性サイトカインや炎症性細胞浸潤も軽減されることが示された。その結果から、肝組織内での微小循環を保つことが、肝障害を軽減するために重要であることが示された。 それらの結果を踏まえ、直接的に肝微小循環を改善するため、血栓性微小血管障害症(thrombotic microangiopathy: TMA)の原因となるvon Willebrand Factor: vWFを分解するADAMTS13を投与することにより肝障害が軽減できるかを検討した。 前回と同じくマウス肝の70%の肝を60分間クランプし、240分のreperfusionを行うモデルを作成し、遺伝子組み換えADAMTS13(4μg/20g)をクランプ解除直後に静注した。術後の肝障害を評価するため、肝逸脱酵素(AST, ALT)を測定した。薬剤を投与しないコントロール群との比較を行った。ASTの中央値はADAMTS13投与群、コントロール群でそれぞれ4306 (1671-8229) IU/L、3967 (2618-5207) IU/Lで、ALTの中央値はそれぞれ2024 (1334-3505) IU/L、2861 (1270-3438) IU/Lで、いずれも有意差は認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
肝移植を想定したIRIモデルで、血栓性微小血管障害症(TMA)を直接改善するため遺伝子組み換えADAMTS13による肝障害の改善効果を検討したが、今回の実験ではその有意性を示すことができなかった。一昨年の実験からは抗凝固因子が肝障害を改善することが示されたため、実験の方法や解析方法を再考することでもう一度その効果を検証することが必要である。また、微小循環障害のメカニズムについても検証する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度はIRIモデルから実際の肝移植モデルを用いて再度肝微小循環障害から、vWF, ADAMTS13値の変化について検討を目標とする。今回の実験では虚血再灌流障害後に薬剤を投与しているが、微小循環障害を軽減するためには術前から薬剤を投与が有効な可能性も考えられる。それらの薬剤投与のタイミングや量なども様々に検討する。また、TMAの発症やその抑制について、メカニズムを解明するべく、抗凝固、炎症抑制の面から様々なassayを行っていく。
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