2019 Fiscal Year Research-status Report
数値流体力学による門脈血流解析を通した肝切除・肝移植後肝不全の克服
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19K18112
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小木曾 聡 京都大学, 医学研究科, 助教 (10804734)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 肝切除 / 肝移植 / 門脈 / 血流動態 / 肝再生 / 肝硬変 / せん断応力 / 門脈圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、小動物モデルおよびヒトの肝移植後・肝切除後の門脈血流変化を可視・定量化することにより、肝移植後・肝切除後の肝再生と門脈血流動態との関係を明らかにすること、またさらに過小グラフト症候群と呼ばれる術後早期の肝不全の病態を解明することを目的としている。ラット門脈の解析には小動物用の7テスラMRIを使用した。まずはその精度を評価するため、門脈本幹をターゲットに心電図同期・呼吸同期した2次元PC-MRIと心電図同期を伴わない3次元PC-MRIで撮影を行って比較検討した。さらに絶食および食後のラット門脈の第二次分枝の血流を描出・解析し、第二次分枝レベルの門脈血流の食事による変化を3次元PC-MRIにより同定可能であった。3次元PC-MRIでは、門脈の第二次分枝までの任意の領域において、その門脈血流パラメーターを繰り返し非侵襲的にまた客観的定量的に評価できることが示され、小動物モデルにおいてこれまで実現されていなかった門脈血流の評価方法を確立することができた。ついでラット70%肝切除モデルを作成し、同様に7テスラMRIを用いて術後門脈血流のデータを経時的に収集し、血流速度、血流量、壁せん断応力といった各種血流パラメーターの経時的変化を評価した。さらに、門脈第二次分枝に対応する肝臓の各区域の肝再生率との関連を評価した。ヒトMRIについては、プレリミナリーに健常者の撮影を行い、門脈血流評価に適した撮影パラメーターの最適化を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラット正常肝の解析を終了し、現在論文執筆中である。ついでラット70%肝切除モデルの経時的な血流解析については作業を終え、各種シグナル解析のためのアッセイを進めている。概ね計画書において当初設定したスケジュールに沿った実験の進行だと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ラットの70%肝切除モデルにおいて、インテグリンβ1受容体の活性化やVEGFR3の活性化、組織中HGF量などのサイトカインを、肝切除後から経時的に評価する。これまでに評価した肝切除後の門脈血流変化、すなわち、壁せん断応力、門脈圧、血流量、といった各種の血流パラメーターの肝切除後の推移と、インテグリン・シグナルの活性化や肝細胞の増殖に関わるサイトカインの推移との関連を評価する。また同様に、各種の血流パラメーター、インテグリン・シグナル等の肝増殖シグナル、と肝再生率との関連を評価し、どのような力学的刺激が発生し肝再生が誘導されているのか解析を試みる。 また、ラット90%肝切除モデルを作成して過小グラフト症候群を誘導し、同様の手法により経時的にMRI撮影・門脈血流解析を行い、血流動態と上述のインテグリン・シグナル活性化、および肝再生率や腹水貯留などの過小グラフト症候群の症状を発症した群との関連を調べる。 ヒトMRIについては、健常者、生体肝移植ドナー、および慢性肝疾患患者・肝硬変患者のプレリミナリーな撮影を進める。
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Research Products
(2 results)