2019 Fiscal Year Research-status Report
The clinical significance of c-Met expression in PDAC patients with radiation therapy.
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19K18116
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森 総一郎 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (90804451)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 膵癌 / 放射線治療 / c-Met |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌に対する放射線照射により膵癌幹細胞マーカーとして知られるc-Met発現が誘導されることで、一部の膵癌細胞で悪性能が亢進し、治療耐性や遠隔転移などを介して予後不良に関連するとの仮説のもと、まずは膵癌細胞株に放射線照射を行うことでc-Metの発現変化を経時的に観察した。放射線照射後に膵癌細胞でのc-Metの発現は亢進するものの、その変化は一過性であり、経時的な再分布が観察された。この再分布現象はc-Met高発現細胞と低発現細胞を分離した後でもそれぞれの分画で認められ、高発現分画がc-Met高発現を維持し続けることはできなかった。また、低発現分画からも一定のc-Met高発現細胞の出現が示された。さらに低発現分画に放射線照射を行うことで高発現細胞の出現率は著明に上昇した。細胞免疫染色の結果、この放射線照射によるc-Met発現亢進が放射線によって誘導されたものであることが示された。 次にc-Met高発現細胞と低発現細胞の細胞機能について細胞分離を用いて比較検討を行ったところ、c-Met高発現細胞では増殖能は増強しないにもかかわらず浸潤能は亢進することが確認された。また、c-Met強制発現膵癌細胞株を作成することで、c-Met発現が恒常的に亢進している状態での細胞機能について検討を行い、さらにc-Met阻害薬の有効性について評価した。c-Met強制発現膵癌細胞株では、細胞分離後の細胞機能評価と同様に、増殖能は亢進せず浸潤能については亢進が認められた。また、遊走能についても亢進が認められた。c-Met阻害薬をc-Met強制発現膵癌細胞株に添加したところ、増殖能の抑制効果は認められなかったが、浸潤能・遊走能の亢進については阻害することが確認されたことから、c-Met阻害薬はc-Met発現亢進によって生じる悪性能の亢進を抑制する効果があることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト膵癌細胞株のMiaPaCa2・PSN1を使用し、放射線照射後のc-Metの発現変化について検討したところ、いずれの細胞株でもc-Metの発現は照射後24時間から48時間後をピークに一過性に著明に上昇し、その後再分布し低下した。FACSにてc-Met高発現細胞と低発現細胞を分離して培養したところ、高発現分画・低発現分画ともにc-Metの発現は経時的に再分布し親株に近似していった。c-Met低発現細胞へ放射線照射を行うことでc-Met発現が誘導されることを確認するため、細胞分離後のc-Met低発現分画に4Gy照射を行ったところ、24時間後のc-Met発現は放射線照射を行わないものと比較して著明に上昇することをFACSにて確認した。また、細胞免疫染色では放射線照射後にc-Met発現の強度自体の上昇が確認された。 c-Met高発現分画・低発現分画を分離後、細胞増殖能と浸潤能について検討したところ、増殖能についてはMiaPaCa2で高発現分画での低下が認められた。一方で浸潤能について検討したところ、両細胞株で高発現分画での著明な浸潤能の亢進を確認した。また、低発現分画へ放射線照射を行うことでも浸潤能が亢進することを確認した。 次にc-Met強制発現細胞株の作成を行い、その細胞機能について検討した。MiaPaCa2・PSN1それぞれの細胞株でp-lenti MetGFP (Addgene)を用いてc-Met強制発現細胞クローンの作成を行った。c-Met-OEクローンでは細胞増殖能はコントロール株に比べて低下が認めらたが、浸潤能・遊走能については亢進が認められた。 c-Met-OEクローンに対してc-Met選択的阻害薬INC280を添加した。増殖能・浸潤能・遊走能いずれも、コントロール株では有意な変化が認められなかったが、c-Met-OEクローンでは有意に低下することを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針としては、まず放射線照射によってc-Met発現が誘導されることを、マウス皮下腫瘍モデルを用いてin vivoにて検討することとしている。膵癌細胞の皮下腫瘍を作成し、放射線照射を行い、その後のc-Metの発現について放射線照射線量を変えて比較検討する。c-Metの発現は免疫組織化学や腫瘍のWestern blottingで評価する。 次に、c-Met-OEクローン膵癌細胞の悪性能の変化とINC280の効果についてin vivoで検討する。c-Met-OEクローンを用い、マウス同所性移植モデル・脾注による高肝転移モデルを作成することで、その腫瘍形成能や肝転移能の変化について検討する。また、INC280を投与することによって腫瘍抑制効果が得られるかどうか評価する。
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Causes of Carryover |
実験の試薬が思った数量を消費するまで進まなかったため、次年度に少し繰越をすることになった
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