2021 Fiscal Year Research-status Report
インフラマソーム機構に関連した胃癌における血行性転移制御の解明と新規治療薬の開発
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19K18127
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
佐川 弘之 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (60645092)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 胃癌 / 転移性肝腫瘍 / 血行性転移 / インフラマソーム / Bex1遺伝子 / 胃肝様腺癌 / AFP産生胃癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,胃癌の肝転移を中心とした血行性転移の新たな分子機構を解明することを目的としている.胃癌の肝転移に係わる分子機構に,インフラマソームの関与を考えており,インフラマソームが関与する機序を併せて解明していくことを念頭に置いている. これまでに炎症を基盤に発症する非アルコール性脂肪肝炎 (NASH) の発癌にインフラマソームの関与をqPCR等で示した.加えてNASH発癌に関与する遺伝子としてbrain expressed, X-linked 1 (Bex1) を同定し,肝腫瘍の増殖への関与を肝細胞癌に対するIn situハイブリダイゼーション、ラット正常肝細胞株へのBex1遺伝子導入実験、ラット肝癌細胞株を用いた発現抑制実験でBex-1の関与を示した. 胃肝様腺癌は,胃の組織でありながら肝細胞癌に類似した腫瘍細胞を発生し、かつ早期から高頻度に転移性肝腫瘍をきたす双方の観点から、αフェトプロテイン:AFP産生胃癌とともに腫瘍性増殖能ならびに血行性転移メカニズム解明に有用な組織像と判断した.外科的治療を施行した1,100を超える症例から臨床・病理組織学的に肝転移胃癌症例、胃肝様腺癌症例、AFP産生腫瘍を選定した (胃肝様腺癌:5症例、AFP産生腫瘍:5症例(転移性肝腫瘍切除例を含む)).切除標本の腫瘍部位を中心にAFPおよびBex1の免疫組織染色を施行した. AFPの免疫染色からAFP発現の多い検体を中心にMicroarray analysisにて同疾患・病態に関与するいくつかの遺伝子の選定に着手し、検証している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
腫瘍に対して当院で外科的治療を施行した1,100を超える組織標本から肝様腺癌ならびにAFP産生腫瘍の選定を行った.ただ本実験において使用し得る標本かを事前段階で免疫染色で評価した.当院病理部でAFP産生胃癌診断時に使用した抗体が廃盤となっており、新規抗体で免疫染色を施行した.その結果、診断時のようにAFPが特化して染色されず、選定標本の本実験へ使用する妥当性がないのか、免疫染色法・抗体に問題点があるのかへの評価に苦慮した.抗体を再度選定し直し、染色方法の再考から診断時の状況と一致した検体であることを確認し得たものの時間を要した. またCOVID-19の社会的背景から安定した物品の供給が得られず、研究の進捗の大きな影響をおよぼす結果となってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
転移性肝腫瘍を高頻度に発症する肝様腺癌AFP産生腫瘍症例をもとにMicroarrayanalysisを行い、同疾患ならびに病態に関与する遺伝子の同定に努める. その後、ヒト正常胃粘膜 (胃上皮) 培養細胞を用いてシグナル伝達経路の変動と細胞増殖能へおよぼす影響を検討する.胃充実型腺癌細胞と管状腺癌細胞株ならびに胃原発の肝様腺癌細胞株(TSG11) を採用する.加えて同定遺伝子の強制発現操作を行い,胃肝様腺癌細胞の増殖に対する影響をMTTアッセイにて検証していく.同時にヒト胃癌由来の腺癌・肝様腺癌細胞株に対する解析遺伝子の発現抑制による機能解析を予定する. 胃癌血行性転移におけるインフラマソームの関与を調べる研究では、インフラマソームパターン認識タンパクであるNLRP3,NLRC4, AIM2と実行タンパクであるCASP1の遺伝子ならびにIL-1β,IL-18,さらには下流の遺伝子群について検証を試みる.またリアルタイム定量RT-PCR法いてその発現程度を解析する.
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Causes of Carryover |
残念ながら予定より研究が遅れているため,当該年度は使用額が少ないものとなった. 今年度は、Microarray analysisの結果、胃癌の血行性転移・肝転移に関与が予想される遺伝子を軸に細胞株実験やインフラマソームパターン認識タンパクであるNLRP3,NLRC4,AIM2と実行タンパクであるCASP1の遺伝子ならびにIL-1β,IL-18,さらには下流の遺伝子群について調査する予定であるため前年度の残額の繰り越しが必要と判断している.
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