2019 Fiscal Year Research-status Report
腹膜偽粘液腫の治療法の開発:ゲノム解析と患者由来がんモデルを用いたスクリーニング
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19K18136
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
野口 玲 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (30779682)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 腹膜偽粘液腫 / 患者由来がんモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、希少がんである腹膜偽粘液腫に対する奏効性を有する抗がん剤を見つけることである。腹膜偽粘液腫は、標準治療はなく、外科的治療による原発巣の切除と粘液物質の除去およびマイトマイシンCの腹腔内灌流化学療法が効果的とされているが、腫瘍の完全切除は困難で,数年の経過で約40%が再発を繰り返す。希少であること、細胞株や実験動物などのモデル系がないため、基礎研究や前臨床試験を行うことが難しい。そのために、治療開発が停滞している。本研究は、既存薬剤の中から奏効性を有する抗がん剤を見つける「既存薬の適応拡大」を行う。具体的には「患者由来がんモデルを用いたスクリーニング」を行う。 本年度は入手したした腹膜偽粘液腫検体でHDRA法を行った。疾患の特徴である粘液分泌が過多なため、腫瘍が粘液にコーティングされており、組織に薬剤や培地などがしみこまないという問題が起き、HDRA法を腹膜偽粘液腫で行うのは難しいと判断した。同時に行っていた患者由来がんモデルである初代培養細胞株の作製を行った。方法として酵素分散法、組織切片法など、培養の基質をマトリゲル、コラーゲンなどを試したが、線維芽細胞の増殖が速く、上皮細胞のみを培養することは難しかった。最終的にセルソーターを用いて腫瘍組織から上皮細胞のみ回収し、回収した上皮細胞をMEFに播き、無血清培地(RNA-Seqの発現プロファイルをもとに作製したもの)にて培養が可能になった。これらは国立がん研究センター先端医療開発センター清野透先生のご協力を得て、行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究に着手すると、腹膜偽粘液腫の粘液を著明に産生する性質でHDRA法の施行が難しいこと、今までに細胞株が1例もない腹膜偽粘液腫の細胞株樹立の難しさに時間を費やした。しかし、多くの方の協力により、腹膜偽粘液腫の手術検体から患者由来がん細胞の樹立する系を作製できた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、希少がんである腹膜偽粘液腫に対する奏効性を有する抗がん剤を見つけることである。本年度は腹膜偽粘液腫の患者由来がんモデルである初代培養細胞株の作製の系の確立と初代培養細胞株の樹立を行った。今後の予定として、保存してある30検体を用いて、再度初代培養細胞株の樹立を行う。また患者由来がんモデルの作製の際に出現した線維芽細胞については「がん間質線維芽細胞」として回収を行った。がん間質線維芽細胞が同検体由来か、またフローサイトメトリーを使用して、線維芽細胞であるかどうか確認を行う。作製した細胞株を用いて、薬剤感受性試験を行う。薬剤感受性試験については、回収したがん間質線維芽細胞と共培養を行い、細胞株単独と共培養での薬剤感受性の違いがないか確認する。
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Causes of Carryover |
腹膜偽粘液腫の患者由来がんモデル作製の系の確立に時間がかかり、薬剤スクリーニングなどは施行できなかった。薬剤スクリーニングを行うに必要な額は次年度に使用する予定である。また患者由来がんモデルの作製にも経費がかかるので、そちらにも使用する予定である。
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